TOP | 【特別講演】小嶋千鶴子 刀自 三回忌によせて

商売成功の理由は人それぞれ。しかし、商売失敗の原因は、ほぼ共通している。
このウェブサイトは、商売が失敗する原因を学ぶところです。

商人道義塾

Limited Partnership ENLIGHTS & Co.  

創立21周年記念事業(2020年当時) 

商人道義塾の利用は原則無料ですが、 Cookie(クッキー)の使用許諾を含めた、ご利用条件LinkIconがございます、必ず最初に御確認ください 
  
 
 
   

【特別講演】小嶋千鶴子 刀自 三回忌によせて 

 
 
 
 
リンク掲載ご承諾済

  

2024年5月20日 
 
 

小嶋千鶴子 刀自 三回忌に寄せて

 
合掌

サービス業への警鐘と重要なお知らせを含みます。
 
尚、実名多数のため誤認無き様に閲覧注意をお願い申し上げます。
 
(本講演内組織名、全敬称略御容赦願)

 
 商人道義塾 塾主 山口善義
掲載日:2024年8月1日

  
 

 【 目次 】 

 
 
 
 
 
 
 
 

はじめに

 
 

小嶋千鶴子という御仁の人柄や功績を語り残すことよりも、その生き方を後進に残すことが小売業及び、サービス業の地位向上と業界の発展に繋がる。今も変わらぬ思いであります。
 
奇しくも今年(2024年)は、私がコンサルタントになったとき、引退の歳と決めていた時期であり、この時期が、小嶋千鶴子刀自の三回忌と重なりました。
 
私は、祖父の背中を幼少より見ながら「誠強き生き方」というものの尊さを見てきました。「至誠天に通じる」この言葉は事実であると存じます。
小嶋千鶴子刀自もまた誠の強さを感じる御仁です。その生き方に改めて敬意を込め、正直且つ率直に世の現状を語れば、これも供養に繋がるのではと感じました。
 
誰に対しても歯に衣着せない物言いができるのもまた、強い誠があるからこそ。これを誰よりも
小嶋千鶴子という御仁から学べます。私も、これにあやかり、この度は少し率直に語ろうと存じます。
 
本特別講演は、小嶋千鶴子刀自三回忌の5月の命日に公開するものでした。
当初の内容は、様々な業種について多くを語るものを用意していました。
 
しかし詳細を語ろうと思う程、空しさの方が強くなり掲載を二ヶ月以上も控えてきました。
なぜならば、コロナ禍以前とは人の意識が大きく変わったと感じることが増え、サービス業従事者の多くが、私の話に聞く耳を持たないだろうと感じたからです。 
特にサービス業の大手企業へ私が伺っても、私が言っていることが既に何のことやら全く通じないだろうと感じています。
 
ここ一年サービス業を拝見し、様々な思いが込み上げてきます。
小嶋千鶴子刀自三回忌に寄せての寂しさと、現状のサービス業を見るうえでの寂しさが交差しています。

もはや私の話に価値を見出す法人は無い。そう感じるようになっております。
 
 

■ 重要なお知らせ

 
 
2024年8月31日をもって、STCMデザインコンサルティング(商人道義塾関連)のノウハウ提供に関し、当社から法人様へオファーする営業活動の一切を終了致します。
 
しかしながら、世相を見ると益々困る方々が確実に増えると存じています。
このため、当社へ御依頼があれば、御相談に応じる覚悟だけは残しておきます。
 
 
 

 
 
 
 
 
 

第一部

 
 

それでは、特別講演をはじめさせて頂きます。

今、このページにお越しのあなたは、私がこれから話す事が通じると良いと願っております。
 
この度、当社が業務終了と判断した動機、そして私が大手のサービス業企業ほど通じないと感じた理由、宜しければ一緒に感じてみてください。
当初用意していた物は長くなりすぎました。このため、この度のものは多くを割愛しています。
 
しかし、せっかくお越しになった あなたには、講演の最初にいくつか抜粋してお話しましょう。
 

一つ目は、
イトーヨーカ堂の創業者、伊藤雅俊翁から何を学び直せば、イトーヨーカ堂は復活できるのか。これについて、私の見立てを語りました。【link:フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)参照』】
 
今もし私がイトーヨーカ堂に伺い、御担当者様に「なぜ、伊藤雅俊翁から学ばないのですか?」と尋ねたとしたら、現在の御担当者様に、問いの意味するところが通じるでしょうか?
 
恐らく担当管理職はじめ、本社におられる方々は、口々に「私たちは伊藤雅俊翁を学んでいます」とおっしゃるでしょう。
しかしながら、私から見れば、本当に正しく学んでいれば苦戦するなどあり得ないのです。
 
では後進各位は、何を学び、何を学んでいないのか。これが、問題です。
確かに、創業者 伊藤雅俊翁の考えは、後進各位も知っているでしょう。
しかし、言動を学んでいても、掴めないものがあるという現実を学んでいないのです。
 
私たちが、現状のイトーヨーカ堂から学べる大事なことがあります。
 
それは、後進は創業者の考え方を学ぶだけでは駄目だということです。
最も先に学ぶべき事は、伊藤雅俊翁の生き方なのです。そして、その生き方を真似ることでのみ見える景色がある。この同じ高見に立つ為の研鑽があって、はじめて伊藤雅俊翁を学んだ事になるのです。
 
ここで語っている生き方を例えるならば、伊藤雅俊翁の顧客との向き合う姿勢であります。
伊藤雅俊翁から顧客と向き合う姿勢を学んでいないと、どうなるのか。具体的な例を出しましょう。
 
先日、イトーヨーカ堂に行った際、店長かマネージャらしき方が、「セルフレジは、すぐに使えます」と何度も大きな声で誘導していました。しかし、殆どの顧客は、たった2台の有人レジに行列のできる状態で並び、移動をしません。
 
この現象から、あなたなら何を学びますか?
 
この現象からサービス業にとって大事なことが学べます。
イトーヨーカ堂ほどの企業になれば、DX推進の政府の意向や、電子マネー普及の一翼を担う立場であることは理解できます。
しかし最も商人にとって危険な事は、売り手都合で顧客ニーズの読み間違えをすることなのです。
 
顧客ニーズを酌む能力が、現場レベルで弱くなる。これが、サービス業にとって落日に向かう元を作るのです。 
今、イトーヨーカ堂が食品売り場や惣菜売り場の改革をすることは、決して間違いではありません。 
しかし、私から見れば枝葉の剪定にしかすぎない。
今、最も避けてはいけないことは、GMSの再定義だと見ています。【link:フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)参照』】
 
GMSのフォーマットを、どう変えていくのか。
百貨店とGMSは何が違うのか。
あるいは、ショッピングモールと、どこで差別化するのか。
類似ビジネスと、相違点を明確にすることが必須になってきているのです。
 
 
これは、百貨店で働く人達にも言えることです。
百貨店が苦戦する理由は、高価で高品質な商材を陳列すれば、百貨店としての品格が出ると錯覚していることなのです。
商材がいかに高価でも、接客スキルが稚拙だと、すぐさま高価に見えなくなる。この購買心理を学んでいないのです。
スペシャリティを売るのが、本来百貨店としてのビジネスモデルです。したがって、近所のスーパーへ買い物に行く時と同じ服装では、気が引けると来店客に思わすこと。この心理を掻き立てる存在こそが、百貨店なのです。
ところが、苦戦している百貨店は、この心理を掻き立てる必要性すら知りません。
 
では、スペシャリティはどのように作られるのか。
それは、「商材の質と、店員がかもし出す雰囲気の総和」で作られるのです。これは商人なら江戸時代から知っている事ですが、今の百貨店の方々は忘れておられるのです。
これに気づかなければ、近い将来、百貨店は日本から無くなります。
 
百貨店は、高価で良質な品を陳列し販売するだけで済むところではなく、スペシャリティという付加価値を品に附帯して販売する必要があるところなのです。
スペシャリティがあるからこそ、わざわざ何時間も掛けて来店する人が生まれるのです。
この原則に気づかず、無くなるとするならば、誠に残念なことです。
 
 
話題が脱線しましたので、GMSの話に戻しましょう。
 
GMSの有様を、どう変えるか。この難しい問いの答えは、世のため人のために何をすれば、己の存在意義が生まれるか。これを、本気で悩む人間しか得られません。
そして何より重要なことは、ここで私が答えを語り、回答が分かっただけでは意味をなさないと言うことです。
この世には、自らの苦辛で生まれてきたものだけが長続きするという摂理があるからです。
 
簡単に手に入ったものなど、財産にはならない。何事も、そういうものであります。
 
私の仕事は、答えを教えることではなく、答えを見つけられるように仕向けることです。講義でも、自助できるように誘導することが私の役目だと思って、安易に答えは言いません。
 

イトーヨーカ堂の方々の名誉の為に補足します。
もし本当に人手不足により、セルフレジを普及させたいと思うなら、人間の本能を拝借すれば良いのです。
 
人間の行動判断は、善悪より損得で決められることの方が圧倒的に多い。この摂理を利用すればいいのです。
有人レジより、セルフレジの方が得だと、お客さまの脳が条件反射するように仕掛けを作れば良いのです。
 
現在、「店は客のためにある」この大原則が軽い言葉になっていると感じるのは、私だけなのかと思うと、実に切ない気がします。
社員達に、口酸っぱく教えてきたはずの伊藤雅俊翁が、現況を見たら何を感じるだろうかと思います。
 
 

続いて二つ目の話を致しましょう。
 
当初用意した内容には前項に関連して、セブンイレブンのセミセルフレジについても語っています。ここでは抜粋してお話します。
 
コロナの感染防止によりセミセルフレジを導入した意味は、痛いほど理解ができます。
しかし、早急に次のシステムに入れ替えなければ、落日に向かう元を生む。そう見ています。
 
多くの方々がセブンイレブンが落日に向かうなどあり得ない。そう思われるかも知れません。
あなたが、そう思われても、無理はありません。
 
では、私は何を問題視しているのか。
レジ袋の有料化でレジ係は、袋詰め作業がほとんど無くなりました。
この状況で、お客さまが精算している間、レジ係にはお客さまをただ見ている時間が生まれました。

この時間を「可」としている経営者の心根に大きな問題があるのです。
 
私たちが、セブンイレブンから実践マーケティングにおいて学ばせて頂く大事なことがあります。
それは、よく言われている成功事例ではありません。
例えば、POSデータ解析や、ドミナント戦略、弁当惣菜の開発能力等々で成功した表面的な部分ではないということです。
 
最も学ばせて頂く必要がある点は、商材の値引きをせずに、なぜこれほどまで成功したのか。この理由なのです。
今のセミセルフレジから、セブンイレブンは自らのコアコンピタンスを忘れかけている。私は、そう見立てています。【link:言葉の意味は、goo辞書©参照願】
 
商品を値引きせず成功した要因は、便利さの徹底追求に他なりません。
 
1円でも安く買いたいと折り込み広告を握りしめ、買い物する人が多かった時代から発展できたのが、セブンイレブンの凄さです。
 
これは、ひとえに人間は安さよりも優先するものがあるという証しなのです。
この証しこそ、「楽(不精)」をしたいとう欲求であり、この欲求に答えるものこそ、便利さなのです。
したがって、便利さを追求できないものは、たとえいかなる理由があっても、店内においてはならない。これがコンビニエンスストアの肝なのです。
 
今、セブンイレブンは、非常に危険な状態に向かっていると感じています。
一事が万事ということがあります。セミセルフレジに何の疑問も持たない、その心根が、どれほど危険かも、当初予定した物では詳しく語りました。
恐らく致命的なものが、いずれ表面化してくると予想していたからです。
今回は、長くなるので詳細は割愛します。
 
勿体ぶっている訳ではありませんので、全く別の話題になりますが、存在継続が、現在いかに危険な状況かについて語りましょう。
 
もしイオングループがミニストップを手放したら、日本国内のコンビニエンスストアは終焉に向かうと予想しています。

無論、イオングループが、ミニストップを手放すことは容易ではありませんから、今は私の予想でしかないかも知れません。
 
余談を申せば、ミニストップは、ここ十年近く苦戦が続き、大手三社のコンビニエンスストアに食い込む勢いが生まれません。なぜ、生まれないのか。
ミニストップの商材が悪いのか。それともビジネスモデルが悪いのか。
これらとは、まったく違う原因だと、私は見ています。
 
随分前になりますが、テレビ番組にミニストップの本社の関係者が出ておられました。その方曰く、「本社の人間は、アイス(ジェラート)に先ずは詳しくなる」というような話をされたのです。
詳しく語ると長くなりすぎるため、ここでは簡単に語りましょう。
結論から言えば、この考えが苦戦の元なのです。
 
ミニストップの方々は、最も基本的なコンビニエンスストアの原理原則を学んでいない。そう見ています。コンビニエンスストアは、ストアに比重があるのではなく、コンビニエンスに比重がなければ成功しないビジネスモデルだと、未だ気づいていないのは誠に残念だと感じます。
 
小嶋千鶴子刀自にあやかって率直にお話を続ければ、もし仮に私がイオン株式会社の経営コンサルタントなら、ミニストップは譲渡することを進言します。理由は、ミニストップを譲渡することで、イオングループのリテール他部門の発展が加速する。尚且つ、大手コンビニエンスストアの市場を奪えるからです。
しかしながら、私は経営コンサルタントでは有りませんので、これらの詳細な理由と方法論を語ることは、これから先もないでしょう。
 
その上で、ミニストップの方々にエールを送るために申せば、もし今後もイオングループの中で発展し、生き延びたいと願うなら、あることをすれば、これから他のコンビニエンスストアよりも発展する余地はあります。
 
そのヒントだけ言いましょう。
イオングループは縦の繋がりは強固です。しかし、横の繋がりは脆弱な組織だと見ています。横の繋がりを強固にする一翼を担うと発想を変えたとき、新しいビジネスモデルが見えるはずです。
 

セブンイレブンも、イトーヨーカ堂も、元々実力のある会社です。そして優秀な人達に恵まれているはずです。だからこそ、考え方が変われば、方向性も変わります。

セブンイレブンが益々発展するためには、自前でAWSのような基幹システムを持つ覚悟が必要になるでしょう。自前なら、長年蓄積したOFC(オペレーション・フィールド・カウンセラー)のノウハウ流出も避けられます。他のコンビニエンスストアとの日販額差は、商材よりも、寧ろOFCのレベルの差であると、セブンイレブンの方々が誰よりも分かっておられるはずです。この最大の宝を、再認識する時が来ています。
 
イトーヨーカ堂におかれては、昭和の時代からさかのぼり、最も強かった時の社内の雰囲気を思い出すことであります。当時のお客さまとの向き合い方を顧みれば、必ず良い答えが発見できます。それだけの社徳がある企業です。
しかし、社徳は外部の人間が思っていても何の意味もありません。構成員が自らの矜恃として実感し、はじめて意味が生じるものであります。
 
井阪社長という人格者がおられる間に、自らのコアコンピタンスに気づき、良い改革ができることを陰乍ら願っています。
 
これ以上は語る必要はないと思いますので、この辺で次に参りましょう。
 
 

「千丈の堤も蟻穴より崩るる(韓非子)」と言う言葉があります。【link:言葉の意味は、goo辞書©参照願:goo辞書の表記では崩れる】

サービス業ほど、この言葉通りになる業種はないと、私は見ています。
私が何十年もの間、サービス業の閉店倒産する組織を見てきて思うことがあります。
成功する要因は様々にあります。しかし失敗する原因は、不思議なくらい共通すると見ています。
 
 
この話は、あなたにとっても必要になるのではないでしょうか?
 

そこで、少しお話しましょう。
先ずはじめに、大企業の場合と、小規模会社とは閉店倒産する原因が違います。
いずれの原因も、誰でも分かるように簡単な言葉でお話します。
 
話の順番が逆になりますが、簡単に理解できる小規模会社の場合から話しましょう。
 
誰でも商売を始めると、最初は一店舗目から始めます。投資家がいて、複数店舗から始められる一部の例外もありますが、ほとんどは一店舗目の成功なくして、二店舗目は有りません。
そして、三店舗目を出店し、それぞれの経営が軌道にのると、経営者はドイツの高級車を乗り回せるようになります。
そうなった際に私が「社長の麻疹(当社造語:実際のはしか病とは関係無し)」と呼ぶものに罹患する社長が必ずでてきます。
これが、小規模会社のリビングデッド(成長停止)、または閉店倒産になる大きな原因なのです。
 
初耳の方が多いと思いますから、「社長の麻疹」を分かり易く実際にある例でお話しましょう。 
ドイツの高級車に乗れるぐらいになるわけですから、飲食店や買い物する場所もグレードが上がります。これにより、自分が経営する店舗と同等の店に行かなくなるのです。

この結果、徐々に自店の顧客ニーズが読めなくなっていく。そして同時に、「傲る」ようになる。これが、私が「社長の麻疹」と読んでいる閉店倒産する原因です。 したがって3店舗以上、出店できている人は、この社長の麻疹には罹患していないと言えます。
 
商売は、30店舗を100店舗にすることより、3店舗を5店舗にすることの方が、遙かに難しい。これは、創業者なら皆知っています。

あなたは、この理由を知っていますか。
ご存じなければ是非、考えて見てください。
 
ヒントは、一人のオーナーが直接管理できる店が、3店舗までだからです。
一人のオーナーが直接管理できない場合に必要になることは何か。
これに気づけば、五店舗出店が、夢幻では無くなります。
 
  

それでは次に、大企業が閉店倒産する場合です。 
代表的な例は、二つあります。
 
一つ目は、経営層の傲りです。

慢心の心根が、経営が上手くいっている攻勢時は良くても、守勢を怠るのです。これが足をすくわれる人達の典型例です。
 
例えば、余剰資金があるからと、自社のコアコンピタンスを軽視し、畑違いのジャンルに投資をはじめる。実はこれも「傲り」が原因なのです。
 
分かり易く実例で申せば、ジャスコもイトーヨーカ堂もバブル経済を乗り越えられたのに、ダイエーは駄目でした。この違いこそ、傲りの有無なのです。
 
日本一傲りの無いサービス業の企業を、あなたはご存じですか?
 
私の知る限りで言えば、イオンです。そして、岡田元也イオングループ会長が、私が知る中で、最も傲るという心根から遠い経営者だと見ております。
ただ、岡田元也会長は、人から褒められることが嫌い、且つ世辞を言う人間を容易に信用しない御方と感じますので、私も理由は割愛します。
 
 
次のケースが、大資本であっても確実に閉店倒産する原因をつくる最も危険なことです。私が常々語っていることを、あなたにもお話します。
 
それは、「顧客に近い店頭の従業員が思考停止になること」です。

顧客ニーズを最も皮膚感覚で感じることができる人達が、何も考えず「作業」だけを、ただただ熱心に行う。これが、必ず落日に向かう原因を生むのです。
では、なぜ従業員は思考停止になるのか。この原因を結論から言えば、士気の低下です。

士気が低下する原因は様々ありますが、代表的なものがあります。
 
それは、店頭従業員各位が、新しいアイデアや、業務改善の意見を言っても上層部が聞く耳を持たないと感じる状況にあるとき、士気低下が生じます。
 
厄介なことに、これに拍車を掛けるものがあります。それは、「頑張って働いて店舗売上が上がっていても、自分達の給与は変わらない」と、店頭従業員各位の潜在意識が知っていることなのです。
 
無論、店頭従業員各位は、頭でも給与は売上に正比例して上がらないことは知っています。
潜在意識が知っていることと何が違うのか。疑問に思いますか?
 
潜在意識は、行動抑制をかってにかけてしまう性質があるのです。
簡単な言葉で言い換えれば、頭で意識的に「給与は上がらないけれど、それでも頑張ろう」と、どんなに強く思ったところで、容易に人の体は動かないのです。
 
したがって、この現象を知らない店長は、店舗従業員各位を「頑張れと激励するだけで売上が上がる」と思い込んでいます。だから、失敗していくのです。
  
今私が言っていること、簡単なことのように聞こえるかも知れませんが、かなり重要で怖い話なのです。そこでもっと簡単に分かる怖い事例を話しましょう。
 
あなたの自店や、あるいはプライベートで良く行かれる店で働くアルバイトや、パートタイム職員の方々に「あなたは、お客さまが大事ですか?」と、尋ねて見てください。
 
100%全員が即答で「大事です」と言うと思います。
そこですかさず、何パーセントの人が、お客さまを大事にしている行動をとっているか観察してみてください。今しがた即答した人が、何もしない姿をみて恐ろしく感じるでしょう。
これが、行動抑制という意味なのです。
 
言い換えれば、頭で分かっていても、体が動くとは限らない。
これが、人間なのです。この現象を踏まえて、実技指導しないから成果が上がらないのです。

私が、怖いという理由は、本人は自覚しておらず無意識に行動が抑制されているからなのです。これが、厄介という点です。 
例えば、酒もタバコも体に悪いことは、全員知っていますが、止められない。これは、自我(顕在意識)よりも、真我(潜在意識)の働きが強いためです。
人間は、頭で考えたぐらいでは習慣が変えられないと言われるのは、このためです。
 
特にサービス業は、小売業をはじめ、店頭従業員の約8割以上が非正規雇用者であり、売上に関係無く給与が支払われます。このため、暇な店の方が自分達は得になる。これを、各自の潜在意識が既に知っているのです。 
サービス業で、業績が回復出来ない幹部や、管理職のいる会社は、この現場の人間がもつ本能を酌まずにいる方々が多いのです。
 
あなたも、そう感じませんか?
 
先ほど、イトーヨーカ堂のセルフレジ誘導が、いかに危険な状態を表しているか。
 
あなたは、もう気づいてしまったかも知れません。
目前の顧客はセルフレジを嫌がっているにも関わらず、上からの指示だからと盲目的に、何の疑問もなく動く。
これが、近い将来、自らの職場を無くすことに繋がると、店頭従業員は分からない。実に切ない現象なのです。
 
ただ根深い問題が別にあります。セルフレジの必要性に関して一般客にアンケートを実施すると、殆どの場合、セルフレジを無くせという回答は出てこないのです。
 
アンケート調査は、質問の仕方で、いとも簡単に回答が変わる。そういうものです。 
例えば、
セルフレジは、便利だと思いますか?
セルフレジは、無くした方が良いと思いますか?
セルフレジより、有人レジの方が楽と思いますか?
セルフレジは、高齢者向きと思いますか?
セルフレジの方が、有人レジより値引率が大きかったら、どうされますか?
 
以上、問いを変えるだけで、回答内容を簡単に操作できるのです。
アンケート調査に意味はないとは言いませんが、閉店倒産しないようになるものでは、一切ない。私が言う理由は、ここです。
 
アンケートで顧客の本心を酌めると錯覚しているのも、閉店倒産する人達に多い認識です。
 
現場でよく観察すれば、後期高齢者層がセルフレジに、どのくらいおられるのか。万引きのリスクに対して、投資対効果に合っている機械なのか。
これらを観察するだけでも、セルフレジが欠点だらけだという事が、すぐ分かるはずです。
 
先日、ケンタッキー・フライドチキンでのことです。二人の女性が入店してこられました。二人とも白杖をもっています。店員は、誰も気に留めない。あの二人は、どうするのか。助けようかと見ていました。数分後に世話人だと思う人が入店してきて、二人に代わって注文しているのです。
 
お客さまを差別しない、あるいはSDGs推進と謳っていても、心根が薄情だと、あのセルフレジに、何の疑問も抱かない。人の世の悲しい現実です。
カーネル・サンダースが、この状況を見たら声を上げて泣くだろうなと思って見ていました。
 
アンケート調査では抽出されないものを察する能力こそ、マーケティングセンスに他ならないと、私は話しています。(ご興味ある方は、こちらへどうぞ)
 
なぜ今、大手企業ほど本物の能力を鍛えようとしないのか。実に不思議です。
 
落日に向かう組織の経営層は、全ての答えは現場にあるという感覚が分からない。なぜ、賢いのに分からないのか。それは顧客ニーズは、経営数値に表れると誤認しているからなのです。
こうなる原因も、「傲り」の心根なのです。
 

私は店頭で、店頭従業員の心理と、経営層の意識のズレの怖さを、常に感じています。
 
だからこそ、大組織は現場と経営層を繋ぐ人達が重要になるのです。
そこで「大組織の会社に入社した若者には、必ず社員教育で教えるべきことがある」と言っているものがあります。
 
それは、「命に逆らいて君を利する、之を忠と謂う」この本意と実行の方法論を教えることです。
 
上司に反抗するのではなく、上司の面子を潰さずに、上申するスキルを教える。これが、結果的に組織の繁栄永続に欠かせないと既に分かっているからです。 
そして、上申するスキルを身に付けることが同時に副産物を生むことも分かっています。副産物は、離職者を減らすことができてしまうのです。
 
人間という生き物は、主体性を発揮できる瞬間に、自意識を得られ、これが活力の源を作るのです。
この証拠に、人に認められない人間は、やる気がなく、ふてくされていることが多いです。
 
非行になる子供達も、生まれつき素行が悪いのでは無く、大人に認められた経験が少ないのです。これが、非行の引き金になるのです。
本能には承認欲求があります。非行は、これが悪くでたにすぎません。
爆音を鳴らし、バイクや車を走らせるのも、自らの存在を無意識に誇示したいという承認欲求の表れなのです。
 
「お前が生まれてきたことは、良かったことなんだよ」と本気で言ってくれる大人が立ちはだかれば、必ず本道に戻ってくる。それもまた人間の良さであります。
 
この現象が分かると、指導者や教師は、やる気の無い人間や、ふてくされている人間に「やる気を出せ」と声をかけても意味が無い。これを、すぐに悟れます。
人間がやる気をだせるのは、主体性を発揮できたり、自意識を実感できたりする場があるからです。指導者や、教師は、この場を作ることを先に行うのです。
人間は誰しも、自分は、ここにいて良い人間なんだと思える瞬間、人生の軌道が安定するようにできているからです。
 
 
さらに申し上げましょう。
次期社長を教育するプログラムを作り、社内外で募集をかける大企業があります。ニュースで御覧になっていませんか。
 
私から見ると、社長の育成より遙かに大事なことがあります。それは、社長を裸の王様にしない側近達の育成です。
 
歴史を見ても、天下取りや成功者は、必ず側近に恵まれていることに気づくはずです。
本田技研工業ソニーを見ても、創業者だけが凄いのではないと学べるはずです。【link:フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)参照』】
 
組織が大きくなればなるほど、トップの側近の質が命運を決めている。令和でも、これから先の未来でも変わらない現象なのです。
 
 
いかに名君でも、この人が側にいなければ勝てないという分かり易い実例があります。
しかしながら、詳しく申すと無礼になるため、余談程度で話しましょう。

実は、私は孫正義さんが作った起業家倶楽部の出身です。
若い頃から、孫さんが登壇すると聞けば必ず参加しプレゼンを聴き、その仕方を学んでいました。
但し、孫さんに会ったことも、会いたいとも思うこともありません。
なぜなら、お目にかかっても、孫さんのプラスにならなければ時間泥棒になるだけだと思っているからです。
 
孫正義さんの凄さは、ここで私が語らずとも、名実共に誰もが知っておられるでしょう。
「孫正義さんの凄さは、何か」と、仮に私が問われたら何と申すでしょうか。
無論、いくつもあって全ては語り尽くせませんが、どうしてもと言われれば私流に、二つだけ答えます。
 
一つ目の凄さは、未来は夢が創るのでは無く、志が創るということを知っておられるところです。これは、ジャスコを創設した一人、岡田卓也翁からも学べます。
「人は、夢をみるだけでは望みは叶わず、志を立てて道筋をつけ進むから手に入るのだ」という事実を、後進にみせつけた。この孫さんの功績は、非常に大きいと思っています。
 
二つ目の凄さは、奥様を含め、人に恵まれるところです。
孫さんの周りには、孫さんがホラ吹きのような大望を語っても、奥様はじめ、誰一人それを否定する人がいない。
これは、本当に凄いことなのですよ。
 
多くの人達は幼い頃から、お前には無理。そんな夢見ても意味ない、現実を見ろ。身の程を知れ。そうやって、悪気無く潜在意識に、限界を植え付けられてくるのです。
 
会社でも同じです。発展のない会社は、必ず部下の進言を頭ごなしに否定する管理職が、必ずいるのです。
 
お話のついでに余談を話しましょう。
私の見立ての詳細を具体的に語ると無礼になるため、余談中の余談になります。
 
孫さんの後継者を見つけることより、宮内謙という御仁を見つけることの方が、比較にならない程、至難の業だと私は見ています。
 
なぜならば、「孫さんの後継者をどうすれば、見つかるか」と、もし私に質問が来れば、私は簡単に即答できるからです。
 
孫さんの祖母のような御方と同じ、祖母がおられる人から選ぶ。
あるいは、孫さんの父親のような子育てができる親を持つ人から選定すれば良いと簡単に答えられます。
しかしながら、出自を問うことは現代はできません。したがって、私が孫さんの役に立つことも、呼ばれることもない。恐らく、永遠に聞かれることも無いと言えます。

教育者や、子を持つ人は、孫さんの父親の子育て方法を学ぶと、大成させる子を育てる方法が簡単に分かります。
 
私から見れば、孫さんの祖母は人徳を積む見本、孫さんの父親は子育ての見本。そう思っております。
 
教育者や親が、孫さんの父親のように子育てすれば、日本の国力は必ず上がる。どなたかが本にすれば良いのにと昔から思っています。
 
せっかくですから、私が知る孫さんの父親の子育て法を少しだけ申しましょう。 
親が子に、お前には無理だとは、一切言わない。
尚且つ、少しでも新しい事ができると褒める。それも、褒められている子供が、それほどでもないよお父さんと、恐縮するほど褒めちぎるのです。

こうして育った子には、自分の限界という概念がない。これが、経済発展の最大の原動力になる。そう思われませんか?
 
なぜ私が知っているのか。随分前になりますが、孫さんの実弟が、起業を目指す東大生に話す会がありました。そこに私もいたから知っているのです。
 
 
ここまで話したので、少しだけ孫さんの祖母について話しましょうか。

十代の頃に日本に連れてこられ、嫁ぎ先を選ぶ自由もない。働く場所ができても、肥料を得るためにとリアカーで肥溜めを集める日々。ヌルヌルとしたリアカーに孫を乗せて働く。日本人の子供達から石を投げられ、乗っている自分の孫の額からは血が流れる。そうした生活の中でも、鼻歌を唱えるような心持ちで生きられる。人を恨むなと孫(まご)に教えられる。それが、孫正義を創った祖母の生き様です。
 
東大首席卒業、米国系コンサルティング会社出身、この程度の人達を探してきても、孫さんに歯が立つわけがない。後継者にもなれない。ましてや、知識など増やしたところで、抜本的な差が埋まらない。
あなたも、そう思いませんか?
 
 
 

頭が良いだけでは勝てない領域があると感得できて、初めて名君になる。

 
私は、この意味を感得できる者から、組織のトップは選ぶべきだと思っております。
 
 

話を、宮内さんに戻しましょう。
随分と前になりますが、ある会議で私の目前に、宮内さんが座られたことがあります。私の名刺を見て、難しい会社名ですねと笑ったお顔が、今も思い出されます。
 
私は、宮内さんを拝見し、会議の内容が入ってこないほど釘付けになりました。生まれて初めてみるエネルギーだと感じたことを鮮明に記憶しています。
 
宮内さんも、今は現役を退任されましたが、世俗にいる間は、月初や週始めには必ず本社に来て何時間か居て貰う。仕事が一切無くても宮内さんのデスクは、本社内に用意されている。SOFTBANKにとって必要なことだと見ています。
しかしながら、この意味、誰にも伝わらないと思います。これ以上は申し上げても、オカルト的に聞こえてしまうので止めましょう。
 
そして、孫さんにはもう御一人。無二の存在が居られます。
北尾吉孝翁という御仁です。私がここで詳しく語る必要はないほど、有名な御方です。私流に率直に申せば、「態度はでかい、口も悪い」と一般の人は感じるかも知れません。
しかし、中身である真我は100%信用しても足らないほど、間違いのない御仁だと存じています。
 
もし仮に、北尾さんが居られなければ、ADSLの普及は無かったでしょう。
結果、今のソフトバンクにもなっておられなかったと察しております。
 
孫さんの凄さは、富は天下の回り物で元より私物化できないと分かっているため、何千億、何兆円もの借金があろうと気に留めないで済んでいるところです。
その孫さんには、生来の勝運をもった御方と、現代の錬金術師が脇を固めている訳ですから、凄いことは誰にでも分かると思います。
 
人に恵まれるということが、成功には何より大事という意味、決して気休めでは無いこと。この事実を多くの人が実感できれば、互いに大事にし合う世の中になります。
 
そして、もう一つおまけの話を申します。
 
岡田卓也翁、土光敏夫翁本田宗一郎翁松下幸之助翁、こちらの方々に共通する点があります。
あなたは、ご存じですか。【link:フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)参照』】
 
共通する点とは皆様、妻に恵まれているということです。
商売の成功は、家族の和合無くしては得られない。これもまた、きれい事ではない事実なのです。
 
夫の名前だけ知り学び、夫を支えている人達は知らない。これでは、人間の勉強をしているとは言えない。違うでしょうか。
 
 

久しぶりに、孫さん、宮内さん、北尾さんのことを語り、懐かしい気持ちになりました。
 
若い頃は、孫さんにお目にかかりたいと思ったことが数回はありましたが、先ほども言ったように、今は全くお目にかかりたいとは思いません。

お目にかかれば、つい余計なことを言って殴られるかも知れないなと思うからです。 
私が学んできた若かりし時の孫さんは、ベートーベンのようでした。
お目にかかったら、長い間の愛着から、初対面にもかかわらず孫さんに対して「いかに疾風怒濤の人生を生きぬいてきたかが、分かりますね」と言ってしまいそうです。危うきには近寄らずが、安寧に生きるためには大事です。
 
余談は、このへんにしておいて、ここで小休止をとりましょう。
 
次回、第二部をお楽しみください。 
  

第二部

 

小嶋千鶴子刀自三回忌に際し、改めて私が思うことがあります。
 
それは、私の話が分かる会社が日本には無くなったなと感じることです。
あなたも、私の話を聞かれ、そう思いませんか?
 
もし、あなたが私の話を理解できる人達がいる会社をご存じなら、是非教えてください。
私共から営業には行きませんが、これからも勉強させて頂きます。
 
冒頭申し上げました様に、2024年8月末日をもって、法人様に対して、当社からのオファーを止めることにしました。
 
私の言う事が分からないだろうというのは、当社の勝手な想像ではありません。
ここまで話した内容で、あなたも既にお察しになられているかも知れませんが、私の言う事が通じる法人が無くなったという、その証しをお話します。
 
例えば、埼玉県さいたま市にあるハイデイ日高の本社に伺い、創業者 神田正翁から、なぜ最も大事なものを学ばないのですかと尋ねたとします。
恐らく、まったく通じないと思います。質問の意図すら分からないでしょう。【link:フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)参照』】
 
「神田会長から、自分達は出店する物件探しやリサーチの方法はちゃんと学んでいますよ」と即答されるでしょう。
しかし、この程度のノウハウなら神田正翁以外からも学べます。
神田正翁から学ぶべき真髄は、圧倒的な情の深さから生まれてくるものの正体なのです。
 
性別や職業では、一切客を差別しない、その情の深さ。
 
言葉にすると簡単ですが、神田正翁が、今で言うカスハラなどと右往左往しているような人なら、今のような発展はしていない。三店舗すら持てていないはずです。

今でこそ、さいたま市大宮区は住みたい町ベストテンの上位になります。
しかし、神田正翁が始めた頃は、今とは治安も含め別世界のエリアです。
かなりオブラートに包んで語っていることを察して頂けると幸いです。
 
そうした様々な職業の人達が入り交じるエリアで成長できた理由。それこそ、美味しいラーメンを作るより、圧倒的に大事なことがあることを証明されたのです。
 
商売は、薄情で成功するほど簡単な世界では無い。この真実を学べる見本中の見本、それが、神田正翁という御仁です。
 
美味しい料理さえ作れば、来客数が増える。だから儲かると錯覚する人間が、店を出すから3年も続かないのです。
当然ながら、不味い料理では話になりません。しかし、上手い料理を出せば客が来続けるほど、簡単な世界ではない。これが、外食業の現実です。
今のままであれば、近い将来、日高屋は必ず苦しくなると見ています。
 
確かに、日高屋は品質が落ちているわけではありません。新商品も出せる企画力があります。
しかしながら、店長からパートタイム職員を含め、最も教えなければいけない心得を教えていない。そう感じる店が、ここ数年で激増しています。
 
日高屋の方々にエールを送るためと、名誉の為に補足しましょう。
日高屋は、日本一美味しいが、たまに行く店というラーメン店ではありません。週何度でも行く店というラーメン店であります。したがって、安価は武器になる。
しかし、安価だけで勝負してしまうと、必ず足をすくわれる様になるでしょう。
神田正翁から学ぶべきこと。それは週何度も通える源を大事にして営むということです。それは、居心地です。
但し、この場合の居心地は、長座して頂くための居心地ではありません。これが、ヒントです。少し分かりにくいでしょうか?
 
それでは、もう一つヒントを言いましょう。
子供は、おばあちゃんの家に遊びに行くの好きでしょう?
なぜ好きか、考えた事ありますか?
この遊びに行きたくなる理由、これが居心地の正体であり、神田正翁から後進が学ばなければならないものと私が言うものです。
 
 

このお話と同じようなことが他にもあります。
 
東京の赤羽にあるニトリの本社に伺って、「なぜ、似鳥昭雄翁から最も大事な事を学ばないのですか?」と尋ねても、恐らく誰にも通じず、すぐさま門前払いで終わるでしょう。【link:フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)参照』】
 
 
情の深い人間が、科学的、合理的に行へと檄を飛ばしても、結果的に上手く行きます。
しかし、薄情な人間が、先代の言動だけを真似て科学的、合理的にやろうとしても、良い結果は出ず商売は傾く。
人間は姿形、所作を真似ても心根の違いで結果が変わる生き物なのです。

実技の世界は、ジャンル問わず、この摂理が働きます。
この本意を学べるのが、他ならぬ似鳥昭雄翁という御仁なのです。
 
プロ野球選手の投球フォームを全て真似て、同じ速度で腕を振ったところで、同じ球は投げられない。これが現実です。 
ところが、実技指導者の多くが、これを無視して子供達に教えている。それが日本では多いと見ています。
 
例えば、スポーツだけでなく仏法の修法であっても同様の働きが生じます。
目を瞑り、呼吸を整え、無心になろうと集中しても、心根の状態が違えば、先人達と同じ境地にはなれない。それが、厳しいかなこの世の現実なのです。

そして、何より厳しいことは、感覚は文字にできないということです。
したがって、教典に書かれていることは、ホットミルクの膜の如き薄い内容のもの。その程度だと自覚し、感得することを優先しないから、始祖亡き後、始祖が教えてもいないことを勝手解釈する者が現れる。そして、後進を惑わすのです。
 
ニトリ店は、確固たるブランドとフォーマットが完成されているため、今は社内の人達も、お客さまも、問題点に気づかないかも知れません。
しかしながら、私から見れば既にN+店には、似鳥昭雄翁から大事なものを学んでいない証しが、現れていると見ています。

N+店は、今は増える一方ですが、会長がおられなくなったら、恐らく止めようと言い出すものが出る確率が高い。非常に、志が脆弱だと店頭で感じています。
 
かつてタルボットに、当社の者と視察に行ったときも同じ懸念を語りました。【link:フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)参照』】

「この店の陳列綺麗でしょう?」と私が言うと、同行した者も「良い店ですね」と感想をもらしました。そこで私は、すかさず「商品も良いし、陳列も美しい。でも、人を寄せない。それが、来店客がいないことで分かるよね。残念なことは、恐らく私の見立てを分かる人が、この会社にいないね」と言ったところ、同行者は、「確かに入りにくい店ですね。なぜ、入りにくいのか」と、頭をかかえていました。

商売は、美しく陳列することの意味を知らず、整然と陳列しても駄目なのです。
その証拠に、バーゲン品でカゴに山積みでも飛ぶように売れることがあるでしょう? この違いを、店員各位に理解させていることが大事なのです。
 
今の日本は、中高年層の女性がリーズナブルな値段で、最新のおしゃれができる洋服屋が少ない。したがって、N+店やタルボットは、中高年層の女性に喜ばれて良いはずなのです。
 
ところが売り手側が、この自覚がない。その証しに、若年層をターゲットとした洋服屋と店作りが同じ。結果、マネキンの使い方、試着室、接客法、全てがニーズから外れているのです。まして最大の問題は、中高年層の女性を美しくして上げたいという情が薄い。このため、来店客に対しても興味が薄い。
 
ではなぜ、こうしたことが起きるのか。
 
結論から言うと、心根が商売の成否を決めるということを、似鳥昭雄翁から学んでいないからです。
頭では「お客さま大事」と分かっていても、体が動かないのは心根に重きを置いていない証拠なのです。
 
そして、これらに拍車をかけている厳しい現実があります。

現在の日本のサービス業は、大手企業ほど、男女平等を声高に謳ってはいても、実践的に現場レベルで女性脳を活かすノウハウの研鑽を積んでいない。この結果が、様々な問題を生んでいると分析しています。
 
業種を問わず、会社に女性社員が増えることは良いことです。
但し、女性が増えると言うことは、女性脳特有のメリット、デメリットも増えるということです。これを踏まえた人事戦略や社員教育をしていかないと、売上は必ず停滞、あるいは下がる。そして結果的に性別問わず不幸なことになっていく時代になると予想しています。
 
但し、女性が悪いから売上が停滞する、下がるという陳腐なことを言っていません。女性脳を見方にできるスキルが、未だ身についていないということです。
 
この意味、恐らくニトリの方々も含め、多くの皆様が今私が何を言っているかが分からないかも知れません。
女性の活躍が目覚ましいイオンであっても、私が言っている意味が皆目見当すらつかないでしょう。
 
私が冒頭申し上げた、私の話が分かる法人がいないということ。
あなたも、そうかも知れないと感じませんか?
 

最後に、小嶋千鶴子刀自三回忌に寄せて、故人のかかわる話で締めくくりましょう。

「岡田屋とフタキ、シロの三社が合併しジャスコが生まれ、今日イオンとなりました。なぜ、イオンは日本一になれたのか?」と、尋ねられたとします。
 
お客さまとしての立場、証券アナリストや経営コンサルタントの立場で、回答の内容は変わるでしょう。
 
私は、証券アナリストでも、経営コンサルタントでもありませんので、そちらの観点で語ることはできません。ただ、一つだけ語るとすれば、ウォルマートは、なぜ海外進出の方法を、イオンから学ばないのかとは、常々感じています。【link:フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)参照』】
 
ここで私流に、STCMデザインのコンサルタントの立場で、イオンの凄さを語りましょう。
 
イオンが日本一になれた理由から申し上げます。それは、日本で最も人に恵まれたからです。
 
これは、きれい事でも社交辞令のような陳腐な話でもありません。真実です。
但し、「人に恵まれていること」を知っただけでは意味はありません。ここでの問題は、日本で最も人に恵まれるために、何をしたか。ここが大事だと言うことです。
 
人に恵まれるからこそ、会社は成長し発展する。これを証明した人こそ、小嶋千鶴子刀自であると、私は思っています。
 
この「人に恵まれる」という言葉には、実は深い意味があります。
それは、仮に入社前に優秀でなくても、入社後に優秀になれば良いという意味を含んでいるからです。
 
この感覚が、よくある会社とは観点が違うのです。
入社後に優秀になれる人が、応募してくる。これもまた、人に恵まれているということなのです。
「良い人に来てもらおうではなく、来てもらった人には必ず良くなって貰う」これが、人を育てる組織を作る心なのです。
この心がイオンの人材開発の根底にあった。これが、教育のイオンと言われる所以です。

そして、この証しがあります。
イオングループは、今や300社を越える大組織ですが、その殆どのグループ企業の経営者及び経営幹部が生え抜きの人達なのです。勿論、グループ外から招聘された方もおられますが、非常に少ないと言うことです。
したがって、イオンの人材教育は、経営者も輩出できるレベルだということです。
 
 
 

既に育っている苗木を手に入れて育てるのではなく、種子しゅうじ※)から育てる。

【link:フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)参照』及び、言葉の意味は、goo辞書©参照願】

 
 
 
この事実を、多くの方々が知ることで、自らの会社や店も人に恵まれる源ができるのです。

是非、あなたも気づいたことから試して欲しいと思います。
そんな簡単なことか。では我が社も人材育成に力を入れようと思った人は、考えが甘いかも知れません。
 
なぜならば、より深い話があるのです。ここからが、人材育成の本質です。
小嶋千鶴子刀自の父、岡田屋の六代目は早くして亡くなられています。
この六代目の考え方が、令和の時代でも容易に真似のできない優れたものなのです。
 
岡田屋六代目がおられた大正時代の岡田屋は、今で言うパートタイム職員を含めて、全従業員が50名ほどの規模の店でした。したがって、大型店ではありません。
ところが、既に食堂、診療所、風呂が完備されているのです。

コンビニエンスストアほどの規模で今現在、この真似のできる経営者を、あなたは見たことがありますか?
 
ところが、これだけでは無いのです。それどころか、呆れるほど凄いことをされているのです。
ストックオプションなどという言葉が無かったであろう時代に、既に社員に自店の株を分けているのです。【link:言葉の意味は、goo辞書©参照願】
 
こうした感覚が、小嶋千鶴子刀自や、岡田卓也翁には、幼少より心身に染み付いているのです。そして、その方々が創り上げた組織が、イオンの前身であるジャスコだったのです。【link:フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)参照』】
 
 
「従業員は、雇用者の従属でも、会社の使丁でもない、世間様からの預かりもの」この感覚が岡田屋から綿々とあるのです。
これが、人を雇う人間の責務なのだと、私は若い頃から学んでいます。
 
そして、この感覚の有る人達が、福利厚生や人材育成プログラムを用意するからこそ見える高見がある。是非、この点を多くの人が学ぶべきだと私は思っています。
 
それでも、今のイオンで働く方々は、こうした伝統があることを知らない人の方が多いでしょう。
ご存じなら、もっと楽しそうに仕事をするはずですから。
 

人に恵まれると言うことに関連し、さらにイオンさんの凄さを表すお話をしましょう。
数年前に、中国で暴動が起きて、中国イオンの店舗も大きな破損や略奪に合いました。記憶している人も多いのではないでしょうか。
 
中国イオンは、日本国籍の社員より、中国籍社員の方が多いと聞いています。
そうした中で、あの暴動の後、現地採用の中国人が誰一人辞めないのです。辞めるどころか、もう一度、自分達の力で復活させるぞと士気が上がったと言われます。
この凄さ、あなたは分かりますか?
 
当時の中国イオンのトップは、元イオン本体のブランディングの責任者、イオンの血脈を尊び、理解している御方でした。そうした御方がトップだったからこそ生じた結果であり、偶然ではないのです。
 
中国人、日本人という括りもなく皆がイオンピープルであり、一人一人が粗末に雇用されているという感覚もない。だからこそ、有事でもの言ったのです。
本当に凄い組織だと思ったことを今も覚えています。
 
イオンの内部の話から、今度は消費者側からの目線で、その凄さを語りましょう。
 
イオンの伝統の中に、私たち市民にとって非常に有り難い考え方があることをご存じですか。
 
簡単な実例で話しましょう。
コロナ禍以前に安く仕入れたマスクを、コロナ禍になり需要が増えたところで高値で売る。そうすれば大きく儲かります。
一般的な商人は、これを喜び、とても良いことだと考えるのです。
ところが、この考えを一番嫌う会社こそ、他ならぬイオンなのです。
 
だから、いかに品切れでも一箱1万円の不織布マスクなど、流通しなかったでしょ?
コロナ禍前に一箱500円で売るために仕入れたマスクは、コロナ禍でも500円のままで販売する。これこそ、イオンが側にいてくれることの凄みなのです。
 
最も大きな店が、客の足元を見ず高値をつけない、このため他店は高値をつけたくてもできなくなる。こうして消費者を不当販売から間接的に保護してくれている。これが、イオンの凄さなのです。
 
こうした考えが、イオンにあるのは偶然ではありません。
小嶋千鶴子刀自の父である岡田屋六代目の祖父、即ち岡田屋四代目の商売に対する考え方が源にあります。
この四代目の商法が、日本一の商法だと、私は見ています。

あまり難しい話ばかりしていると、つまらないでしょう。

そこで、話題を変えましょう。
多くの人達の見慣れた事例で、イオンの凄さを、お話します。
あなたの周りや知人に、市町村の観光課職員がおられたら、是非、埼玉県にあるイオンレイクタウンに視察に行かれると良いと話してください。
イオンレイクタウンは、KAZE、MORI、アウトレットモールと三つのエリアからなる、日本最大の規模のショッピングモールです。
そして、その凄さは東京ディズニーリゾートの年間入場者数より多いと言われます。
それだけ集客が多い場所です。イオンレイクタウンは、観光課職員各位にとって非常に大事なことが学べます。
 
ディズニーリゾートは、清掃クルーがしばしば目につきます。清掃もエンターテインメントになっているからです。
ところが、イオンレイクタウンは、清掃担当者はおられますが、買い物中に気づかないことが多いはずです。

フードコートやトイレ周辺で清掃担当者を見かける事があっても、コンコースで見かける事は、殆ど無いはずです。
それでも、店の内外にゴミ一つ散乱していることなどありません。
大事な事は、不特定多数を受け入れるということは、集客宣伝より、受け入れる態勢を先に整える。このことに力を注ぐ方が結果的に良い。イオンレイクタウンは、これが学べる絶好の場所です。
 
私は以前、入札でイオンに勝った会社がショッピングモールを作ったと言われるところに視察に行ったことがあります。
建物のデザインは、非常にイオンモールと類似点が多く、看板さえ取り替えれば、一般の人は、イオンモールか否かの区別さえつかないだろうと思えるほど、似ていました。
ところが、形は真似できても、イオンの凄さまでは真似できないなと、改めてイオンの良さに気づかされました。
 
イオンレイクタウンに行くと分かりますが、異常に大きい施設です。このため、当然観て回るのは疲れます。
そこで、気づくのです。イスの多さに。
この用意されているイスは、無料のイスです。1円もイオンの利益にはなりません。
 
1円の利益も生まないものに本気になる。これが、商売を成功させる人達の共通点なのです。
この意味が分からない人は、商人の適性はない。そう言えます。
 
詳しく語ると長くなるので割愛しますが、答えは商人道義塾の哲学編講義で発見できると思いますので、受講してください。
ここでは、最も簡単な事例で話します。
 
例えば、トイレだけ使って何も買わずに帰る客がいると怒る店員がいます。
確かに、顧客のモラルの無さも問題です。チューインガム一つぐらい買っても、罰はあたらないと思うのも人情です。
 
しかし、「どうぞトイレを遠慮なく使ってください」と言える心根の人の方が商売は上手く行く。この意味が、トイレをかせない人には、一生分からない感覚なのです。
 
なぜ、分からないのか。それは、能力がないからではなく、幼少から商人の生き方を見て育っていないからです。
このため、商売の成否は売り手の心根の状態で決まるという厳しい現実を知らないのです。
 
商人なら習わずとも、習慣で知っていることがあります。それは、「自ら先に与を出して、与をもらう」この順番が、商売上の信用をつくると、経験的に繁盛店は皆知っているのです。
 
あなたも見たことありませんか、老舗のお茶屋さんに入ると、すぐにお茶が出てくるでしょう?

「冷やかしの客に茶をいれよ」
私の曾祖父も中山道沿いで呉服の大店を創業しています。その曾祖父が、これをつねに口癖にしていたと祖母から聞いています。
 
茶だけ飲んで帰る客が居ても良いと考える。実は、これが、商人の智恵であり、心得なのです。
なぜ、智恵と心得なのか、どれほどの人が知っているでしょうか。
 
トイレを貸すことを嫌がる人が、体から出すエネルギーは、陰。
トイレをどうぞ遠慮なく使ってくださいという人が、体から出すエネルギーは、陽。
 
客は、陽の強いところに集まる。逆に、人を寄せ付けないエネルギーが陰。
これが江戸時代から経験的に知っている商人の智恵なのです。
そして、陽気こそが商売繁盛の元を作るとされる心得の意味なのです。
 
 
昨今のニュースを拝見していると、観光地の苦悩を見ることが増えました。
世界遺産に登録しました。ところが、ここは生活している人達もいるので、ゴミ箱は撤去、駐車場は閉鎖しますと、当然のように語る人が現地にいます。
しかし、これでは世界遺産登録した意味が半減します。
世界遺産登録したら世界中から旅行者が来ることは必定です。それを覚悟していないから、おかしなことが生じてしまうのです。
 
ましてや、SNSで口コミの速度が、昭和の時代とは全く違う世界に生きているのです。どこに穴場と言われるエリアができるか分からない時代です。
黒い膜をはって記念撮影を妨害することを見ても、そこに生活している人達のことを思えば人情としては分かります。
しかし、抜本的な解決になりません。
 
例えば、シンガポールやパリで、黒い膜を張って記念撮影を防止しているようなところありますか?
 
大事な認識は、日本の常識が、外国人の常識と一致しているわけではないという現実を、覚悟することです。
 
その上で、マナーやルールで、相手の道徳観に訴えるのではなく、シンガポールのように問答無用な罰金を決め、損得を明確に示す。
このことで外国人観光客に行動抑制してもらう。これも、国際化基準だということではないでしょうか。
 
新たに考えを変えれば、過疎地でも経済的に潤うことができます。今や夢ではありません。このチャンスを地域の人達のために活かそうと、本気で悩む人が増えるよう願っています。
 
現場感覚で言えば、消費者の怖いところは、一度離れたら、簡単には戻って来てくれない。そういう事例を多く見てきています。
 
良い人だけに観光に来て欲しいとは、残念ながら行きません。
だからこそ、受け入れる態勢をどうすれば良いのか。
是非、イオンに相談されたらと思っています。
 
そうは言ってもイオンは大組織であり、コンサルティング部門などないかも知れません。
そこで、相談に行くとすれば、イオンディライトという会社です。無論、こちらの会社にも観光業のためのコンサルティング部門はないでしょう。
しかし、イオンの施設管理や警備のノウハウを一番有している会社が、イオンディライトという会社です。非常に良い会社です。

複数の市町村観光課から相談されたら、対応も変わる可能性はあると思います。
既にイオンは、包括連携協定を多くの市町村と締結し、防災をはじめ様々な経済の活性化活動を行っておられます。
だからこそ、観光分野でも今後、力を貸してくれる可能性はあります。無論、要望があればでしょうが。
集客に関して優れた人達が、イオンには大勢おられます。その力を借りないのは勿体ない。

ましてや、イオンにとってもメリットはあります。
インバウンドマーケティングが成功すれば、国益になり、国民生活のプラスになっていきます。国民が豊かになれば、恩恵は流通業に直ぐさま現れる。それが経済だと、イオン株式会社なら容易に理解してくれます。グループ全体で協力してくれる可能性はあります。
 
官民一体となれば、資源の少ない日本にとって、掛け替えのない財産に観光業はなる。違うでしょうか。
 
 

あまりイオンを持ち上げると、何か私が利害関係者だと思われるといけません。
そこで、あえてウイークポイントにも少しふれましょう。

但し、外部の人間が具体的に言えば、多くの人達の面子にかかわり、重ねて無礼の極みになります。

サービス業は、「礼が無い者に生きる場はない世界だ」と言っている私が、無礼をするわけには参りません。
そこで、ここでは問題を出すことで換えさせて頂くとしましょう。

是非、あなたも考えてみてください。次に話す、三つの共通点に気づけば、今生じている問題が分かります。
そして答えが分かると、あなたの自社自店で必須なことも分かるでしょう。
 

一つ目の話をしましょう。
 
私が地方に出張に行った際、視察をかねて現地のイオンモールに伺いました。
インフォメーションデスクが、入り口のすぐ前にありました。インフォメーションデスクの担当者に、私の荷物を預けられるところはありますかと尋ねました。
その方は、満面の笑みと、とても丁寧な態度で、貸しロッカーはあちらですと案内してくださいました。
すかさず私は、あなたは私の荷物を見て案内していますかと尋ねたところ、笑顔のまま固まってしまい。何も言えず、何もせずになってしまいました。
私は、クライアントに余計なコストを掛けたくないため、一人移動が通例です。私一人でパソコンや撮影機材を運ぶため、いつも海外旅行に行くようなスーツケースを持っています。この日は、スーツケースに大型のボストンバッグを載せて移動中でした。
1問目は、インフォメーションデスクの担当者が、なぜこのような状況になるのか。本意が分かりますか?
この話、ただ接客スキルが低いとだけと思ったら、答えは出ません。
 
 

それでは、二つ目の話をしましょう。
 
多くの人がご存じの通り、イオンモールの集客力は凄いです。
しかし、集客力があるイオンモール内で、コロナ禍以前に既に撤退するテナントがありました。そして、今も続いています。
恐らくこの現象を、イオンモールで働く人達は、「インテナントの集客力がないため」、あるいは、「経営不振により撤退が生じている」とだけ見ているのではないでしょうか。
 
イオンモールの人達が、自分事として食事が喉を通らないほど悩まれていない。そう感じています。
この二つ目の問題は、なぜイオンモールの本部内の方々は、テナント退店を悩まずに済んでいるのかということです。
なぜ、悩んでいないかと私が言えるのか。
 
テナント誘致には積極的、しかし誘致後のビジネスモデルのアイデアが見えないからです。
なぜ、このテナントの隣りに、このテナントを誘致するのか。その意図を感じないモールが増えていると感じています。
これが、あれほど集客力があっても商売が成り立たない原因なのです。
 
ではビジネスモデルのアイデアとは何でしょうか。
ここでは少し話題が脱線しますが、ビジネスモデルのアイデアを実例で話しましょう。
 
例えば、イオンモールに来店し、服を買う。裾上げ、ウエストのお直し、あるいは高齢者ように背中のタックをつけ、杖をついて歩いてもズレなくできる。これらの料金をイオンモールなら無料でできる。但し、同じ購入店に十日後(仮)以降に取りに行く必要があるというサービスです。

イオンにはマジックミシンというお直し専門の会社があります。この会社の技術を集客の武器に使う。マジックミシンへのお直し料を、イオンモールが負担する。これによりイオンモールへの再来店や来店動機のための広告費とすれば、大きな出費とは言えなくなります。

同様に、イオンモールで購入した靴は、イオングループのリアットで中敷きのカスタムメイドができる。また高価革靴においては、三年後、靴底修理が1回無料でできるサービスをつけ販売できます。あるいは、いくら以上購入のスニーカーなら1回無料のクリーニングサービスがついてくると販売できます。
 
買って終わりではない、アフタパーツ市場が有益なのは、バイクや自動車の世界で既に実証されています。バイクで言えばヨシムラモリワキ、自動車で言えばインパルmax ORIDOのように、自分好みにしたいニーズは必ず有るものです。

特に、中高年層が増える時代には、既製のサイズではあわない人が増えるでしょう。
イオンモールに行くと、これらカスタマイズが無料でできる。
 
無料がマーケティング上、最も強い武器になるのは、Googleが既に証明していることです。

無論、このビジネスアイデアを実施することは、簡単ではありません。
 
なぜ、簡単で無いのか。
それは、売り手の深層心理で決まるからです。
 
お客さまを喜ばすことが好きで無い者にとっては、新しい試みは、全て心身の負荷だけとなる。結果、やらない理由やできない理由を、雄弁に語ります。
したがって、口ではお客さま第一と言いつつも、心根が利己的な者だと決してできないビジネスモデルのアイデアです。

もう一つ、ビジネスモデルのアイデアを出しましょう。

無料の公園を駐車場内に作ることは悪いことではありません。
しかし、行政がすべき事を民間企業がやる必要性があるのか、この意味を深く考えるべきです。

お客さまが本当に欲しいもの。それは、イオンモール内の無料の公園ではありません。違うでしょうか。

イオンモールに買い物へ行けば、夫婦だけの時間ができる。あるいは、母子家庭や父子家庭の父母が、一人の時間がもてる。こうしたリフレッシュできる「もの」の提供こそ、公園より必要ではないでしょうか。
 
そこで公園は、イオンファンタジーの中に作る。
駐車場と同じモデルにし、○円以上の購入で無料になるとします。
 
イオンファンタジーの中に作る公園は、ただの公園ではありません。防犯上この世で最も安全な場所を提供するものです。
誘拐の心配も、事故の心配もない公園です。保護者は安心して買い物時間を満喫でき、子供が飽きない場所ができれば、子供が益々イオンモールに行きたくなる理由になります。
 
子供、女性、男性の順で集客戦略を立てることが有益なのは、既にマクドナルドが証明しています。
夫婦が恋人時代の時間に戻れる。母親が一人の女性に戻れる時間ができる。こちらの方が、駐車場内の公園より、欲しいと思われませんか?
 
私が、これらの例を出した理由は、できない理由を見つける能力ではなく、「できるようにするためには、何が必要か」これを、深く悩む力を育むことの大切さを再確認して欲しいからです。

ただただ一心に「お客さまのためにと、日々悩む」これを続ける。これが、小嶋千鶴子刀自、岡田卓也翁から後進が学ばなければならないことの一つだからです。
 
イオンモールの社員各位は、インテナント誘致よりも、インテナントのシナジーを考える。一店舗ずつの加算で考えず、乗法で考える。それが、モール運営の肝になる時代が来る。これ以上は、私がいう必要はないかも知れません。
 
 
 

「やらない」、「できない」を語ることに、学歴も知能も才能もいらない。
いらないことに懸命になるからこそ、リビングデッドがはじまるのである。

 
 

それでは、話を本題に戻しましょう。
 
三つ目の問題は、これもイオンモールでの光景です。
イオンモールには、無料の休憩スペースがある店が多くあります。私が、休憩スペースのイスに座っていたときに、イオンファイナンシャルの方と思われる男性が3人店舗の視察に来られていました。
そのうち一人の男性は40歳以上で部長職のようでした。あとの二人は新人のように見えました。

さすがだと思ったのは、部長と思われる方が、休憩室のイスと、傍らのテーブルを、備品も含め綺麗に整頓されました。
しかし、新人の二人は、その様子を見ていません。
 
その部長が帰り際に、「綺麗だと気持ちが良いでしょう」と、二人の新人に声を掛けました。自ら率先する立派な管理職だと私は見ていましたが、若い二人は気にも留めない様子でした。
 
 
 

以上が、三つの問題です。

この三つの話には共通点があります。
この共通点が、今のイオンのウイークポイントを表しています。
しかし、多くの人が何の話をしているか容易には分からないでしょう。
だからこそ、考える問題としては良いと存じました。

無論、私はインスペクション(覆面調査)のスキルを人に分けられる立場ですから、本当に唾も飲めないほどの辛辣な弱点は、見えていても言えません。
なぜなら、依頼もなく語れば無礼になるからです。また、それだけでなくプロとして失格だと思うからです。
 
ではなぜ、このようなイオンの話を私が、ここでするのか。
これには、理由があるからです。
先ほども、「千丈の堤も蟻穴より崩るる」と言う言葉があることを言いました。
 
この言葉の重みは、大組織ほど深刻なのです。閉店倒産する人達も最初は些細なことからはじまっています。
 
店舗オペレーションが上手く言っている。売上が下がっていない。だから大丈夫だという感覚が実は非常に危険なのです。
上手く言っている時から、慎重になる。売上が下がらずとも、上がらない状態で危機意識を感じることが大難を避ける。こうした事が、失敗した人から学べるとても大事なことなのです。
大組織ほど、傾いてからでは手遅れに成る確率が高い。ところが、厄介なことに社内にいると、この傾きに気づかないのです。
 
会社や店が撤退や倒産になってから、生き残りに懸命になる社員の方々の姿をニュースで見るたびに胸が締め付けられています。
 
だからこそ、私はこの怖さを常に教えるべきと思うのです。
しかし、私が言うことを通じる会社は、もうこの国にはないかと思っています。
 

「小売業は、雑魚やないか」
この言葉に発奮した若き経営者が作った店が、その後、日本一の小売業になった。私は、この立身出世の話が、とても好きです。
 
この言葉に私も若い頃から触発されてきました。これにあやかって、私もサービス業は決して雑魚じゃない。士農工商の最も下にあるという感覚ではなく、社会を支えている重要な存在だと、世に知らしめたいという志で活動してきました。
 
私の活動では知らしめるところまでは、未だ至っていませんが、今こそサービス業は、雑魚じゃない。そういう矜恃を持った人達が増えることが、必要な時と感じています。
 
 
これほどまで、来店客に感謝せずに商売が成り立つと思っている人達が多い状況は、異常な事態と言えます。
 
 
JRも航空会社も、タクシー業界も、カスハラ対策と、今になり躍起になっていますが、厄介な客は昭和の方が多かったのです。今急に多くなったように見えるのは、SNSの普及の賜物です。【link:フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)参照』】
 
カスハラは許さないと言う前に、不条理なことを客から言われる人と、全く言われない人の違いを、先に分析しないのは、私から見ると本当にお粗末だなと感じます。
浅い考えや志無き発想で、カスハラ対策を声高に唱えれば、結果的に損をするのは売り手側なのです。これもまた、大組織の中で分からない人が多くなっておられます。
 
その証しに、気休めでは無い恐ろしい現実をお話します。
 
サービス業の経営層が、兵法三十六計「打草驚蛇」の法則をしらないことは、誠に残念な限りであります。なぜなら、非常に危険なことになるからです。【link:言葉の意味は、goo辞書©参照願】
 
「不条理な客は対応しない」、「文句を言う客は悪い客だ」というイメージを世間に植え付ければ、善良なお客さままでもが、その風潮に同調してしまいます。この結果、何も言えない空気に社会全体がなっていくのです。
 
特に、本能的に争いを好まない女性脳は、不満があっても益々我慢してしまう。その代わり二度と来店しないという選択肢をとるのです。
あなたは、この恐ろしさの真意が分かりますか?
 
お客さまが再来店しなくなる理由、再購入しない理由、これらが益々分かりにくくなる。この原因を売り手が作ることになるのです。

これが、いかに恐ろしいことか分かる人間が、サービス業ほど上層に行かないといけないのです。今の流れは、私から見ると誠に残念なことです。
 
したがって、正しい商人なら文句を言って貰う、怒って貰うことの方が、黙っていなくなられるよりも、遙かに楽だと考える。これが、激高型クレームにも負けない心の下地になるのです。
 
 

☆ クレーム応対術:ワンポイント・アドバイス ☆


不条理な客に対応するのは、現場の人です。経営層は、毅然と対応しますと言えば済みますが、それでは結果的に現場の人を見捨てかねない。そこで、ワンポイント・アドバイスをしましょう。
クレーム客の対応術で実践的なノウハウを提供できるところは少ないのが現状です。
そこで、当社が多くの人達から感謝されている実践ノウハウの最も重要な点を特別にお分けします。子細は長くなるので結論だけ申します。是非、試してみてください。

1,最初にすべき事は、詫びることではなく応対者自身の心身を守る。
「おい、こら社長を出せ」等と怒鳴られると、応対者の体は無意識に力が入ります。その上、呼吸が止まってしまいます。この瞬間、心身の負担が激増します。そこで、先ず大事なことは、お客さまの怒り中は、呼吸を止めないことを意識します。特に大事なのは、吸気です。吸わないと吐けないからです。
人間は、10分以上怒り続けることは至難の業です。怒りは脳や心臓に負担をかけるため、体力が思っている以上に必要になります。ですから怒り疲れが生じ、お客さまが落ち着くまでは、何もしない。何も言わない。これが、実践ノウハウです。怒り中に、懇切丁寧に詫びても、お客さまの心には入れず無駄な時間になります。このため、応対時間を延ばすだけになるのです。お客さまの怒り中は、応対者自身の心身を守る時間だと思う。これが、実践ノウハウなのです。

2,怒りを助長させない目つきと、話術を意識する。
前項に注意が必要なのは、何もしない、何も言わない状態とは言いつつも、注意があります。それは、お客さまを見るときの目つきです。泣いている赤ちゃんを見て可愛そうだと想い「よ~し、よ~し良い子だね。もう泣かなくても大丈夫だよ」という感情になります。この時のご自分の目を思い出して下さい。その目でお客さまを見つめるのです。この目をする人を、人間は本能的に怒れないからです。 コールセンターでの場合は、目つきは利用できないので、怒り中は相づちだけうって、相手に共感しているという態度を見せつつ、呼吸を止めないようにするのです。

もう一つは、冒頭の話術です。
最初の一言でクレームを避けることができるのです。仮にクレームになっても応対時間は短縮できます。秘訣は、先手を打って相手の怒りを尊重してしまうのです。怒るのは当然です。私もお客さまの立場なら怒りますと、先に共感してあげるのです。これが、コツです。
自分の気持ちを分かってくれる相手に対して、怒り続けることも、人は本能的に難しいのです。
この摂理が分かると応用できます。例えば、子連れの母親が待時間が長く怒ってそうに見えたら、先に「お子さんと一緒で、ただでさえ大変なところ、お待ち頂き、本当にありがとうございました」等の感謝を言い、すかさず子供にも「待たせて、ごめんね」等、優しい声を掛けてあげるのです。
冒頭の話術で、怒りたくても怒れなくする状態をつくることはできるのです。
そしてさらに、知っていて得なことは「申し訳ございません」と言う言葉よりも「ごめんなさい」という言葉の方が、相手の心の奥に入ります。心の奥に入る言葉を常に意識して遣う。これが、怒りを収めやすいのです。

以上です。当社のクレーム応対術は、STAR Marketing戦略©と言います。なぜ、クレーム応対がマーケティングになるのか。それは、激高クレームほど、上手く解決できると一生の顧客になってくれることを知っているからなのです。他にも効果的なクレーム応対のテクニックは多々ありますが、法人様へ当社よりノウハウを分けることは止めますので、誠に残念だと改めて思います。
JRも航空会社もタクシー業界もカスハラ対策が必須だと訴え安易に顧客を悪者にすることより、先にすべき事があるのです。それに気づけないことが、サービス業として不幸のはじまりなのです。カスハラは対応しない、法的処置をとると言ったところで、現場の人のためにならない。
なぜならば、鬼を仏に変えられた瞬間こそ、サービス業従事者冥利なのです。この冥利を奪うことが、本当に現場の人のためになるのか。
この真実に、あなたはお気づきになったでしょうか?

 
 
 
 

文句を言う客に手を合わせられるようになって、商人は一人前となる。

 
 

小嶋千鶴子刀自三回忌によせて、つれづれなるままに今回は語りました。

通常は控えている組織名もお話しました。ここで語った企業名は、学ばせてきて頂いた愛着がある組織です。益々発展して欲しいと陰乍ら願う組織でもあるため、あえて名称を公開しました。
 
当社より法人様への営業活動を止めるにあたり、これが法人用の最後の話ですので、御容赦ください。
そして、小嶋千鶴子刀自三回忌ということもあり率直に語りました。
 
 
 
 
本講演の最後に私の本音を、もう少し語ってみましょうか。
 
「店員の笑顔を評価するAI」、イオンが全店で導入というニュースを、あなたは、既にご存じですか。
他の小売業がするならいざ知らず、岡田卓也翁、二木一一翁、そして小嶋千鶴子刀自が作った会社だというプライドは、どこに消えたのかと、つくづく泣けてきますね。
 
無論、かの三人はジャスコの創業者であり、今のイオングループは、岡田元也会長はじめ後進の方々が大きくしたと私も分かっています。
それを踏まえ私が今言えることは、岡田元也会長の退き際が、益々難しくなった。そう存じます。

引退時を一寸でも誤れば、「イオンは、イオンであってもイオンで無くなる」、そういう状況が早まるだろうと予見できます。
 
 
このような事例は、パナソニックにも言えることです。【link:フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)参照』】

松下幸之助翁が創造した会社だという矜恃を後進が忘れないことが、社運と社格を守る事になる。これが、国内外の競争力の源です。 
もし松下幸之助翁の面影を後進が消せば、ただの会社になる。そうなれば、経済の浮き沈みに簡単に左右される組織になり下がるのです。

松下幸之助翁の教えを学んでいれば、私の言葉の真偽も簡単に分かるはずです。これを分からない人間を増やしては駄目。これが社内教育の目的であります。
また同時に、創業理念を守ることは、そこに族する者達共通の矜恃でなければならないのです。なぜならば、これこそが法人のアイデンティティーであり、存在意義を生む源だからです。【link:言葉の意味は、goo辞書©参照願】
大事なことは、創業者の姿形や言動だけを教えるのではなく、本意を教える事なのです。

意味もなく朝礼で創業者の教えを唱和したところで何も生みはしません。
大事な事は、唱和する行為ではなく、唱和する意味を知り、それら創業理念や行動規範を、全ての判断基準にすることなのです。
 
例えば毎日毎日、般若心経を唱えても、木や土で作った人形を後生大事に守り、庶民が汗水し働いて得た金を集めることに躍起になっているようでは、何百年修行しても般若心経の本意は悟れません。
まして仏法は理論理解の世界ではなく、感得の世界であります。教典の意味や理屈を知っているだけでは何も成さない。
 
この世には真意というものがあります。その真意は言葉だけでは、後進に通じません。

その証しに、簡単な問題を出しましょう。
是非、あなたも考えてみてください。
 
愛という言葉を一切使わず、愛をどうやって人に伝えますか?
 
言語化できないもの、可視化できないものを、いかに伝え続けるか。
こうしたことが、良い伝統ある企業ほど、今問われているのです。
 
 
あなたの会社の事を想いながら、私の話を聞いて下さい。
 
イオンには、「小売業は平和産業であり、人間産業であり、地域産業である」という言葉があります。この中の人間産業という言葉は、人を機械のようにつくり出すことを意味した言葉ではありません。
人を常に中心におき、人ほど大事なものはないという言葉です。

そのイオンで働く後進が、なぜ本気で人を大事にしない。
小嶋千鶴子刀自や、岡田卓也翁が積み重ねてきた思いを、なぜ酌めない。なぜ酌もうとしない。
イオンタワーにある歴史館は、ただの博物館でも資料館でもない。自分達のアイデンティティーの源泉だと、なぜ誰も真理を教えていないのかと、つくづく情け無くなります。
 
もしイオンリテールの経営者が、私の身内ならば、小嶋千鶴子刀自の眠っているところに引っ張って行き、なぜこんなところに眠っていると思っているのだ。誰のために、人知れず、ここにいると思っているのだと問いただすでしょう。
 
人間は誰しも先祖代々より、何千年もの長きに渡り、命のバトンを渡されてきた尊い存在。そして、それはただの命ではなく、我が子可愛いで大事に育ててきた親の思いが、代々のってきている命であるということです。
 
その尊い存在をパブロフの犬のような扱いをして、なぜ許されると思うのか。その心根は、どこから生まれてくるんだと。
 
下は上に従わざるを得ない。そして、本心は尋ねたところで容易に語らない。人は、身を守るために嘘もつく。だからこそ、上に立つ者は、人間の性(さが)を深く学び、尚且つ崇高な哲学が必要なのだ。
お主、小嶋千鶴子の生き様を無にするつもりかと烈火の如く諭すでしょう。
 
無論、現実は、他人様なので私が物言うことはありません。
 
ここにお越しのあなたは、これも何かの御縁です。
是非、ここで真剣に考えて欲しいと願います。
 
自分のひ孫や玄孫を、あの世から見たとして、うちの子孫達は、良い会社に勤めているなと誇れますか?
機械なんかに笑顔を判定されている姿を見て。あなたなら誇れますか? 嬉しいですか?
 
喜怒哀楽の中で、唯一笑うことが人間にだけに許されている意味を、なぜ考えられないのか。
いかにふざけたことをしているのか。真面な人間なら、気づかないといけないのです。
 
接客もしたことのないプログラマーが作った機械に踊らされていたら、いつまで経っても、「小売業は雑魚じゃないか」といわれた時代のままです。
 
AI(人工知能)は、こんなくだらない使用をするための道具ではありません。本当に使うべきは、あの接客センスとはほど遠い、セルフレジに使うべきなのです。
NVIDIAという会社が、なぜあれほど高い株価なのか。この理由を最初に気づくべきが大手小売業なのです。
つくづく今の状況には情け無いと感じています。【link:フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)参照』】

店員の笑顔は、店長やフロアマネージャが、社員やコミュニティ社員の一人一人の人格を重んじ、毎日挨拶を欠かさなければ、自然と出てくるものです。
笑顔がでないのは、コロナ禍が原因ではありません。皆、家庭では笑っているんですから。

笑わないのは、イオンピープルという言葉だけの扱いをし、作業員としてしか見ていない心根が原因です。皆、上層部の心根を見透かしているに過ぎない。
 
店長やフロアマネージャが、日々の挨拶の中で、相手の顔色が悪ければ心配してあげ、意気揚々とした顔をしていればステキだと褒める。そういう些細な事の積み重ねで、チームワークは良くなるのです。チームワークの良い組織は、陽のエネルギーが出る。これが集客力を上げる源なのです。
 
私の言う事が嘘だと思うなら、ジャスコのOBに聞いて回れば良いのです。私が嘘を言っているか、正しいかは、簡単に分かるはずです。
 
 
コロナ禍になり、確かに人間関係は乖離が生まれました。

だからこそ、イオンのアイデンティティーを改めて全関係者に浸透させ、この世に人ほど良いものは無いと、率先して社会に教えるべき存在が、イオンの役目では無いのか。私は、気休め無く思います。
 
日本一のイオンが、見本にならないで、いったいどこがやるんだと、思えば思うほど、法人への営業を止めるに至ったことを思います。
 
イオンは人様の会社ですし、部外者の私が、このような話をすることは、これから先一生ないでしょう。
当然ながら、イオングループの仕事をすることもないでしょう。

自宅から富士山は見えても、富士山からは自宅は見えない。これもまた、この世の摂理であります。
よって、私からイオンは見えても、イオンからは私は絶対に見えない。
私を発見することは、今のイオンにはできない。だからこそ、私がイオンの仕事をすることは無いと言えるのです。
 
 但し、例外はどこにでもあるのかも知れません。
イオングループは、世界に五十五万人以上の社員がおられる巨大組織です。
その中で、私が決めている三名の御方が、部下を介せず直接、私に会いに来られたら無碍に断ることはできないと腹を決めています。

当初は、五名おられましたが、二名の御方は、既に現役を引退されておられていますので、今は三名様だけになりました。
無論、他にも多くの素晴らしい方々はおられます。この三名の御方は、恐らく数十年後のイオングループを予見した際に、不可欠な存在になられると思っているだけのことです。
 
三名様とも今となっては、大勢の部下をかかえる存在ですが、直接のオファーがなければ、私の心は微塵も動きません。
この三名の御方が誰かは墓場に持っていくつもりでおり、私の近親でも知らないことです。
 
 
本Web講演の内容で誤認があるといけません。
念の為に補足します。
 
2024年7月現在、イオングループが全てに問題があるように見えたらいけませんのでお話します。
イオンファイナンシャルは別格のため話題から外して申し上げます。

その上で、イオンらしさが、今も残っているところがあります。
 
三つ代表的な事例を申し上げます。
 
2024年7月の時点での一つは、イオントップバリュ株式会社です。イオントップバリュ株式会社は、イオンのプライベートブランドを企画し販売する会社です。【link:フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)参照』】

物価高騰に給与増が追いつかない厳しい状況の中、トップバリュは、何回かに分け、数十品目単位で値下げをされています。
多くの方々は、プライベートブランド品だから安売りするのだろうと思っているでしょう。
しかし、恐らくは、そう単純な話では無いと思っています。
 
部外者の私が理由を具体的に申せば、社内で尽力している方々に非礼になりかねません。
そこで、状況を例えるならば、「身を削り人に尽くさんすりこぎの その味知れる人ぞ尊し」という状況だと言えるでしょう。
 
イオントップバリュ株式会社は、売上高一兆円ほどの大企業です。
一般的な企業なら、売上高一兆円ですから、豪華な社長室を作り、取締役は皆贅沢な厚遇を受けていても、全くおかしくないレベルの企業です。
しかし、イオントップバリュ株式会社は、こうしたことを一切しないでしょう。
こうした感覚の中で売価の値下げを行うのです。それもお客さまが辛いときにこそと、身を削る。
 
容易に想像できるのは、イオントップバリュ本社内は、節電節電と言われ、廊下は暗闇、執務室は薄暗い。事務用品費もカットされる。まさに爪に火を点すようなコストカットをして消費者に還元しているだろうと思います。これこそが、真のイオンの凄みであります。
 
これが、「身を削り人に尽くさんすりこぎの その味知れる人ぞ尊し」といった意味です。
 
イオントップバリュ株式会社は、小嶋千鶴子刀自の面影を感じる経営をされていると、私は見ています。
小嶋千鶴子刀自も歩ける距離は歩く。タクシーは絶対に使わない。社員より良い車に乗ろうなどということはない。そういう人です。
恐らく同じ売上規模の他の会社では真似はできないと思いますが、あなたは、いかが思われますか?
 
 

二つ目は、イオンペットがされているライフハウスの活動です。
保護犬猫の新しい家族を見つけ、その家族が最後まで看取れるかを確認し、譲渡する支援活動です。
 
お気づきかも知れませんが、イオンペットは、インテナントですが店内で生体販売もしており、そちらに協力した方が利益がでます。それでも、ライフハウス活動を行うのです。
 
そして、この活動を始めたタイミングが凄いのです。
イオンペットは二つの会社が合併して誕生した会社です。新会社で、これから大きく売上を上げて発展しなければならないと考える時期に、ライフハウスをやろうと考えるのです。この凄さを、どれほどの方々が理解できるでしょうか。
 
イオンの先代である岡田卓也翁は、四日市で商売していた若い頃に、親のいない子供に学費を提供する会を持っていました。
 
 
 

情に流される者は、大勢の上にはたてない。しかし、薄情な者に大勢は従わない。

(この感覚を、岡田卓也という御仁から学べば良いと思うのは、私だけなのでしょうか)

 
 
 
世の中には、儲かったら寄付します。会社が大きくなったら社会貢献活動をしますという人は、星の数ほどいます。
しかし、儲かりが少ないとき、会社が小さいときに微力でも始めようとする心根が発展の元を作る。この真実を知っている人は、意外と少ないのです。
 
イオンペットは、他のイオングループから見れば、まだまだ小さい方の会社かも知れませんが、他にない偉大な血脈を有していることは間違いないと見ています。
但し、ライフハウスの活動が、イオンペットにおいて最も大きな金の卵になる存在だということは、未だ気づいておられないとも見ています。
 

最後の一つは、私が常々クレドや社是等を作る際に、必ず見本にすべきと言い、お目にかけるものがイオングループにはあります。
 
それが、アビリティーズジャスコのアビリティーズ綱領です。私が、最も天晴れだと思っている綱領です。
せっかくですから、あなたも是非、一度ご覧になって見てください。
 
ここでとても大事な補足を致します。
アビリティーズジャスコは、障害福祉サービスの会社ですが、障がい者の福祉をする会社だから素晴らしいという意味では、私は一切言っていません。
 
確かに、障がい者の苦労は、健常者が思うほど、簡単ではありません。また、生きる辛さは、障がい者の方々でなければ分からないものがあるでしょう。
想像と現実は異なるからです。
 
しかしながら、肉体に障がいがあっても、魂に障がいが有るわけでは無い。
 
したがって、人としての尊厳に差が有るわけではない。この考えが根底にあるため、私は障がい者を雇用している会社を必要以上に立派だと思いませんし、障がい者の方々を哀れむこともしていません。

この本意は、商人道義塾の哲学編講義を受講すれば分かります。
また、ヤマト運輸の創業者 小倉昌男翁が創ったスワンカフェ(公式)に行かれれば、私の言う事に間違いが無いことは容易に分かります。【link:フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)参照』】
 
きれい事を言っているわけではありませんので、一つ申し上げます。
 
東京の銀座にあったスワンカフェの店長が立食パーティ中で配膳する際のことです。来客者の後ろを歩くとき、呼吸を止めていました。
この呼吸を止める必要性の意味を、高級ホテルと呼ばれているホテルの管理職研修で、数十人の参加者に問題として出しました。
しかし、誰一人回答できませんでした。
 
障がいがあるから健常者より劣っているなどと思ったら大きな間違い。肉眼だけで人を観察しているようでは、真理は見えない。そう言える好例だと、様々なところで話しています。
 
 
以上を、念頭に置いて頂き、素直な心でアビリティーズ綱領を御覧ください。
あなたも、その良さが分かると思います。

人が働くという事。生きぬくために存在するという事。これらの意味を、是非感じてみてください。
「志を先に立て生きる」、岡田卓也翁が後進達に見せてきた大事なものも言葉一つ一つに体現されています。
 
 
今日は、あえて率直にお話しました。
 
あなたの心に何が残るかは分かりませんが、小嶋千鶴子刀自三回忌に寄せ、また法人向けノウハウ提供終了に伴い、今まで公言したことのない内容をお話をさせて頂きました。
 
小嶋千鶴子刀自の生き方を継ぐ意志のない者に、私が何かを教える事は一切ない。
また、志低き商売を求める方々に話すことも、何も無い。

ここで明確に宣言することもまた、私流の小嶋千鶴子刀自への供養と存じます。
 
 

最後まで心を傾けてくださり、ありがとうございました。
心より感謝申し上げます。

あなたが、この世に生まれたことで、あなたの周りの人達が益々幸福になる。この実感を得て生きる。これが、生まれてきて良かったと思える瞬間であります。
この瞬間こそ、自尽の心の対極です。この瞬間を感じる人が多くなることを、心より祈願致します。
 
 
 

商人道義塾 塾主
山口 善義