TOP | 実践マーケティング | 【無料公開】実践マーケティングは、ブランディングと切り離せない

商売成功の理由は人それぞれ。しかし、商売失敗の原因は、ほぼ共通している。
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実践マーケティング講義

MARKETING SENSE

【無料公開】実践マーケティングは、ブランディングと切り離せない

 
 
 
 

 

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講義目的

 
 
 
本講義は、基本講座です。既にブランディング戦略が成功している方々にとっては、簡単すぎる内容です。
予めご了承のほどお願いいたします。
 
 
本講義は、以下の人向けです。
 
 
○ はじめて商品企画担当者になる人。
 
○ マーケティング戦略が成功していない人。
 
○ 広告宣伝が成功していない人。
 
○ 良品でも売れずに失敗した人。
 
○ 売上不振店舗を回復したいと思っているが、何から行えばいいか分からない人。
 
etc.
 
これらの悩みを持つ方々へ向けた講義です。そして、本講義は大学で行うような理論学習ではありません。
言葉の意味を知ることより、自分は今日何をすれば良いのかを知ることの方が大事です。この点を忘れず受講してください。
 
 
 


 
 
 
 
 
 
それでは、講義をはじめましょう。
 
マーケティングを理論として学ぶ人は、理論だけ学んでも、問題無いかも知れません。
またビジネスや、商売上でも、一般的にマーケティングとブランディングは、別々で語られることが、多いかと思います。
 
しかし実践の場では、マーケティングとブランディングは、同時並行で行ってこそ成功確率が高まるのです。
 
商売で上手くいった際に、何が功を奏しているのかと振り返って見ます。
そうしますと、出店前、あるいは新商品開発段階のマーケティング戦略立案時に、ブランディングの意識が有ったことが成功を決めていた。この事実に気づきます。
 
そのため、私がマーケティング戦略の立案や、コンサルティング業務を承る際は、「お客さまのニーズやウォンツの探求」、「販売ターゲットを絞る」これらよりも、多くの時間をかけるものがあります。
 
それは売った後に「何が、お客さまの脳内記憶に残るのか?」、この点を慎重に吟味するようにしています。
 
この理由を、本講義で見つけてください。
 
マーケティングとブランディングは、同時並行で行ってこそ成功確率が高まるため、本講義でも同時に扱います。
 
先ずは実践的なマーケティングからお話して参りましょう。
 
 
 
 

実践的マーケティング戦略とは何か。

 
 
 
 
 

実践的マーケティング戦略とは、お客さまの心に入る為の戦略である。

 
 
 
私たちの経験的な観点から簡単な言葉で表現すれば、マーケティング戦略は、いかにお客さまの心に入るかの戦略です。
 
一般的に言われるマーケティング戦略は、顧客ニーズやウォンツの探求、そして見込み客を発掘するための計画が主です。
 

(※ニーズneedsの探求とは、お客さまが必要とするものに応えようとすること。ウォンツwantsの探求とは、お客さまが欲するものを叶えようとすること)

 
 
しかし、顧客ニーズやウォンツを、いかに正確に捉え、見込み客を特定できても、最終的にお客さまの心が反応し、受け入れてくれなければ成功はしません。
このことは言葉にすると、当たり前だと誰でも気づくことです。
 
ところが、企画や開発の現場では、「良い物を作る」ことだけに集中してしまい。良い物さえできれば、見込み客も自然発生的に現れると、何の疑いもなく思ってしまうのです。
そのため、買い手の心情や記憶に関しては、見落とされていることの方が多いです。
 
したがって、ブランディングを軽視したり、無視したりすれば、綿密なマーケティング調査を基に商品開発し、販売方法を整えても、お客さまの心に入れず売れない。これが、マーケティング戦略失敗の典型例です。
 
お客さまのニーズやウォンツの先にあるものを、ターゲッティングしなければならないのが、実践的なマーケティング戦略であります。
 
実践的マーケティング戦略と、あえて接頭語に実践的と入れる理由は、ここにあります。
 
人が必要とすること、あると便利だと欲するものだけを、マーケティング対象とするのでは、新しい市場はできません。
 
例えば、この商品には、使い道もない。実用性もない。それでも、顧客の心を引きヒット商品になるものがあります。
生活になくても一切困らないが、持っていると満足感や幸福感がある商品は、先進国には溢れています。
 
あなたの周りでもないでしょうか?
例題と思って、身近な事例を見つけてください。
 
 
普段の生活では欲しいと思っていないことも、目にした際に、欲しいという感情が芽生える。これを想定することもマーケティング戦略には重要なことです。
 
 
結論を先に言えば、「マーケティング戦略が成功するためには、お客さまのニーズやウォンツを探求し、製品開発や販売をする。これだけで、終わってはならない」ということです。
 
 
お客さまの心の中に、いかに入るか。お客さまの琴線に触れる瞬間を想定するところまでの戦略を立てることができて、はじめてマーケティング戦略と呼べるレベルになります。
 
お客さまの心に入るまでを考え立案しようとするからこそ、失敗する原因を企画の段階で極端に減らせるのです。
 
例えるならば、事前にどこに穴があるかを知ってさえいれば、柵がなくても落ちないということです。
 
マーケティング戦略が失敗する人は、運転者や道路を見ず、高性能な車を作ろうとしてしまうのです。これが、どういう意味か、お分かりになりますか。
 
  
 
私の所に相談に来られる技術者の中には、「これは、他社にはない良い物だから、必ず売れますよ」と、おっしゃる人が実に多いです。
 
しかし、良い物だから売れると疑いなく思っている時点で、マーケティングを知らないと言うことになるのです。
 
商材の良いか悪いかを決めるのは、エンドユーザーである、購入者自身であり、開発者ではありません。
 
開発者が、いかに自負した物を作ろうが、購入者がいなければ世の中で良い商品とは言われません。
 
これが、この世の厳しい現実です。
 
 
私自身、非常に良いと思う開発品を、発売前に拝見したこと、何度もあります。
しかし、売れずに閉店倒産している会社を拝見しています。
それだけ、お客さまに買って頂くということは、難しいことなのです。
 
 
ここで、マーケティング戦略の成否の例を出しましょう。
 
自動車メーカが、十五歳未満の子供が二人いるファミリー向けとターゲッティングして、ミニバン開発をするとします。
 
A社は、燃費性能、乗車人数、安全性を重視し開発しました。
 
B社は、A社同様に仕様を意識しつつも、この車を買った後に生じるイベントは何か。購入家族がどのようなライフスタイルになるか。購入後の生活様式まで想定し、開発しました。
 
 
両社が販売開始後、コマーシャルでも違いが生まれます。
A社は、性能やデザインをアピールし、B社は、この車を利用したライフスタイルをアピールします。
 
さぁ、どちらが売れるでしょうか?
 
 
車を買った後の自分の生活で、ワクワク感や充実感があるのは、いずれの車か。
 
家族の笑顔は、いずれの車の方が多いか。
 
購入者に、こうした感情が生じやすい方が、売れるのです。
 
 
軽視してはいけない点は、購入者の心理です。
ミニバンではなく、スポーツカーを欲している人なら、性能の高さは重要な選択肢に入ります。
 
しかし、ファミリー向け自動車の場合は、運転者だけのニーズやウォンツよりも優先される条件が生じます。誰が購入判断の引き金を引くのか。その方々の心理を無視しては、売れません。
 
この場合の例としては、A社よりB社の方が購入動機をつくるチャンスが多くなり、結果的にB社の方が売れやすいのです。

確かに性能の高さや、安全性は重要です。しかし、様々な工業製品が甲乙付けがたくなっている現代においては、性能だけでアピールしても訴求力は弱いのです。

その証拠に、コストパフォーマンスが良く、性能も高いにもかかわらず売れない車というのもあります。逆に、性能は高いわけではないのに、デザインや利便性が良いという理由で売れる車がある。こうしたことで分かるのではないでしょうか。
 
品質は良いのに売れない物というのは、お客さまの心に刺さらない物ということです。
したがって、高性能や、必要性、実用的というだけで売れるとは限らないということです。
 
逆に、高性能でなくても、また必要性や実用的でなくても、欲しくなる感情さえ生じれば売れる。
これが、販売の世界です。
 
 
その上で、もう一つ見過ごせない厳しい現実があります。
 
仕様や性能の良さを売りにしているA社の販売店に敏腕営業マンがいるとします。
この敏腕営業マンの自己判断で、お客さまに車の性能の良さをアピールせず、購入後のイメージを売ったとします。
 
今度は、逆に購入後のイメージを売りにしているB社の販売店の営業マンが、車の仕様や性能だけ強調して売ったとします。
 
そうすると、どうなるでしょうか。
 
コマーシャル段階では、B社が有利だったものが、販売段階で逆転してしまうという現象が、実際にあるのです。
 
このセールス力の差が、品質以上の差を生むことがある。このことは、トップセールスマンなら皆が知っていることです。
 
 
これらの現象を知っているからこそ、いかに買った後の情景をお客さまに意識して頂くかが大事だと言えるのです。
 
 
 
マーケティング戦略で、ターゲッティングする際は、お客さまのニーズやウォンツの探求だけで止めず、そして自社製品がお客さまの心に入り、購入動機づけが生れるところまでをターゲットにします。
これが、販売成功の鍵なのです。
 
是非、あなたも実際の現場で試してください。
 
自動車だけでなく、食品、服飾雑貨、不動産、サービス業務、みな同じ原理です。
 
 
 
今度は、別の事例をお話しましょう。
 
一生懸命且つ丁寧に商品説明していて、売れない販売員がいます。
あなたの周りにもおられませんか。
 
 
先ほどの自動車販売のケースで、お気づきとは思います。
マーケティング戦略同様、セールスも、品質の詳しい説明よりも、購入後のイメージを売ることの方が、売れるためには重要なのです。
 
見込み客を増やせないマーケティング戦略立案者や、営業成績が良くない販売員に共通する認識不足があります。
 
「売り手側は売ることで終わりますが、買い手側は買ってから始まるのです」ここを、見過ごすから営業成績が伸びない。ここが共通点です。
 
「これは良い物だから、買ってください」ではなく、「この品を買うと、どうなるのか」これを、お客さまの脳内に映像化させる。これが、セールスで大事なスキルになるのです。
 
是非、販売力のある人達を観察してみてください。私の言うことが分かります。
 
あなたが、すぐに見つからないと困りますので、いくつか実例を出しましょう。
 
 
 

1,保険外交員の事例

 
 
営業成績が悪い人は、保険は保障を売ることだと思っています。そのため、保険商材の内容や保障内容を懇切丁寧に説明しようと考えるのです。その結果、一生懸命説明すればするほど、結果的にセールスが失敗する。営業成績が悪い人の典型例です。
セールスが、下手な人ほどよくしゃべると言われるのは、このためです。
 
逆に営業成績の良い保険外交員は、保険は安心を売ることだと知っています。
 
そのため「安心」は、まず安心な人から手に入れることだと分かっているため、商材より先に自分を売ろうとするのです。
 
そして、売った後も定期的にお客さまとコンタクトを取り、安心感を維持してもらう努力をする。だから営業成績が上がるのです。
 
所作が同じでも、心根の違いが結果を生む。これは、実技の世界の鉄則でありますが、セールスの世界でも言えることです。
 
 
 

2,商店街の八百屋の事例

 
 
「このキュウリは、新鮮で美味しいですよ」と売るよりも、
「このキュウリを切って、このタレをかけるだけでおかずが簡単に一品増え、御家族も喜びますよ」と説明する方が売れるのです。そして何より、キュウリだけでなく、タレまで買ってくださる。
商品を買った後の情景を、お客さまに抱いてもらうことが、セールスの成否を左右しているのです。
 

このテクニックは、様々なケースで活かせます。
 
 
 

3,一戸建て販売の事例

 
「この家は全館空調で、光熱費が低く抑えられます」と設備を強調するよりも、
「凍えるような真冬でも、この家はトイレに行っても、洗面所で脱衣するときも、廊下でも、リビングと同じ温かさです」と、話す方が、高齢者や冷え性の人には、購入動機が生まれやすくなるのです。
 
説明する内容や方法論は、ケースバイケースでお客さまによって変わりますが、基本は買った後の情景をお客さまの脳内で映像化する。
これが、セールスの成否を分ける。これを、けっして外さないことです。
 
 
 
 

4,小売業での営業不振事例

 


 
《 ご注意  》

本事例では、名誉の為に企業名は控えます。
なぜなら、働いている人達に非があるわけではないということは分かっているからです。また、私の話がどの店のことかを知っても意味はありません。
あなたの会社で同じことが無ければ良いのです。
 
他人や他社の欠点や短所を見つける能力が高くても、人生の役に立ちません。
欠点や短所を批判することは、海水を釣り竿で叩くようなものです。
釣れない憂さ晴らしになっても、魚が釣れるようにはなりません。
 
これと同じく、商売も他店の短所を見抜くトレーニングなどしても商売繁盛にはなれません。
 
大事なことは、自店の隣に同業者が出店しても右往左往せず、何一つ動じない。このためのノウハウを自分のものにすることです。これが、本講義の目的です。
この点を、けっして誤解せず受講してください。
 


 
 
 
 
多くの人達は、資金力がないと商売は上手く行かないと思っています。
確かに、資金力があることは有利です。ただ、資金力があれば良いともいえない事例をお話しします。
 
私が顧客の立場で好きな店があります。なぜ、好きなのか。
それは、バイヤーが仕入れた商品ではなく、販売者が売りたいものだけを仕入れているため取扱商材が活き活きとして良いのです。店舗デザインも素敵で、見ているだけで楽しいから好きなのです。
 
さらに捕捉すると、この店は、親会社があり資金力があります。
ところが、このお店は苦戦していると見ています。
 
傍から見れば、資金力もあり、出店場所まで良いところにある。羨ましい状況です。
それで、なぜ苦戦しているのか。
 
それは残念なことに、二つの必須なものがないのです。
 
一つは、商売の基本、二つ目は、本講義にあるブランディングのノウハウです。
 
では、なぜ無いと言えるのか。
 
簡単に言えば、良いものを仕入れて、並べるだけで売れると思い込んでいること自体、商売の基本を知らない証しです。良いものだとお客さまに記憶して頂くための手段をとる必要がある。これが商売の基本の一つだからです。
 
もう一つのブランディングのノウハウがないという理由は、店名で判ります。
 
店名が記憶し難い。したがって、他店との識別が脳内で起きない。
そのために、ライバル店と同じような品がおいてあるという記憶だけが残りやすい。これが、店の競争力を奪っているのです。せっかく良い物を仕入れているにもかかわらず、良いものだとお客さまに記憶されないように自ら誘導している。それも悪気無く。だから、残念なのです。
 
ただし、本当に残念と思うことは別にあります。私が店頭で観ているのは、店自体ではありません。
店の状況から水面下の問題を推測しています。
 
それは、親会社に優秀なビジネスマンはいても、商売や、ブランディングの基本を教える人が既にいなくなっていると推測できてしまうからです。
 
子会社の店舗より、こちらの方が実は深刻だと見ています。
誰も気づかないということは、体で例えるなら、膵臓に悪性腫瘍ができるようなものだからです。
 
気づいたときに、リカバリーができるだろうか。部外者の私が心配するのはおかしいですが、店内で切なさを強く感じています。
 
世の中には、資金力だけあれば良いと言えないこともあります。
 
 
資本力がある企業でさえも、マーケティングやブランディングのノウハウが無いと、すぐ様苦戦する時代になったと言うことです。
 
あなたは、何を感じますか?
 
 
 
 

 
 
 
 

ブランディング戦略とは、お客さまの記憶に残るための戦略である。

 
 
 
先に実践的なマーケティング戦略について話しました。その一方で、ブランディング戦略は何でしょうか。
それは、お客さまの心に一旦入った「店舗イメージ」や「商材」が、永続的に記憶に残るための戦略となります。
 
いかなる商材も、ブランディングを軽視すると、興味本位で来店、あるいは一度購入して頂いても、リピーターは生まれません。
 
したがって、会社、店舗の永続的経営のために、ブランディング戦略は非常に重要な事になります。
 
 
そこで、今回は「ブランディングとは、何か」ということから、はじめます。
その次に実践の場で、あなたの会社、店で、どうすれば良いか。話していきます。
 
最初に、あなたに伝えたいことは、本講義は、大学の授業のような学術研究としてのブランディングではありません。冒頭申し上げたように、理論理解のためでもありません。
 
したがって、難しく考えなくて大丈夫です。けっして難しい講義ではありません。
 
 
あなた自身の商売に照らし合わせ、想像できるようにお話します。
安心して講義を受けてください。
 
 
 
 

ブランディングとは、何か?

 
 
 
ブランディングの話の前に、そもそもブランドとは何かについて話していきましょう。
 
ブランドと言うと多くの人は、フランスの洋服や鞄のメーカー、イギリスの紳士服メーカー、イタリアの靴メーカー、スイスの時計メーカー等々を想像するでしょう。
確かに、そう思われても間違いではありません。
 
ただし商売上では、これだけの認識では、まったく役に立ちません。
 
 
商売で役に立つ、ブランドの考え方は、大きく二つあります。
 
 
 

一つは、他との差別化です。

 
 
簡単な言葉で表現すれば、お客さまの脳内で、あなたの会社、店舗、商品等が、どのように識別されて記憶されているかです。
 
お客さまの脳内で、他と差別化されて、混同されずに記憶されるもの。これこそが、ブランドです。
 
 
 

二つ目は、商品そのものの価値以外に生じる何らかの付加価値があるもの。これも、ブランドです。

 
 
例えば、値段以上の価値がある。高価でも品質に絶大な信用力がある。あるいは、所有していることで優越感や幸福感がある。
これらの感覚を得られるもの、これもブランドです。
 
先ほど例として挙げた、フランスやイタリア、スイスの製品がブランドだと思う人が多いのは、この二つ目の理由を感じているからです。
 
 
本講義でいうブランドという言葉を、日本的に表現すると、「暖簾(のれん)」ということになります。
商家で育った人でないとピンと来ないかも知れませんが、暖簾とは、店前にかかっているものを指すだけではなく、店の信用や、そこで働く人達の誇り、こうした物を総称して暖簾と呼ぶのです。
 
したがって、「暖簾を守る」という言葉は、店だけを守る言葉ではありません。先代からの品質や信用を守りつつ、店で働く人達の誇りも守るということです。
 
 
大手企業が、歴史館や社史等を作っても、社員教育上で意味をなしていないのは、この「暖簾を守る」という感覚を教えていないからです。
 
 
 
 

ブランディング戦略 〈 差別化の立案 〉

 
 
 
一つ目の差別化について、お話しましょう。
 
差別化とは、読んで字の如く、他との違いであります。
 
簡単なことからお話します。
 
もし自店の商品と他店の商品とが、差別化できないとしたら、どうなると思いますか?
 
この場合、安価な方が強いとなります。これは、誰でも知っています。
 
そこで逆に、自店の商品と他店の商品とに違いが、はっきりつく。今度は、どうなるでしょうか?
安価な方が強いとは言えなくなる。これが、ブランディングの重要さです。
 
「他店より高価格でも、この店の品を買う」と判断するお客さまが実際におられるのは、この店でしか買えない価値を理解している証しだからです。
 
ブランディングの重要性を結論から言えば、「自社自店の競争力、販売力は、お客さまの記憶に全てが委ねられているから」ということです。
 
 
もう、お気づきになりましたか?
 
お客さまの記憶の領域に、自社自店の製品が入り込めさえすれば、資本力の大きさは関係無くなるのです。
即ち、小さな店でも、同一商圏エリアなら大企業に勝てるチャンスが有るということです。
これが、商売の醍醐味です。私が、ブランディングを軽視しない理由を分かって頂けたでしょうか?
 
補足すれば、自転車操業で、いつも苦労しているお店は、ブランディング戦略という発想がないのです。
そのため、絶えず他店との競争は「安価でないと勝てない」と勝手に思い込んでしまい。
薄利多売の苦しみから出られないのです。
 
休日返上で働いて尚、利益が出ず裕福になれない人は、商売のやり方に問題があるより、考え方に問題がある。そう話しています。
 
 
我が社は大企業の下請けだから、万年零細だと嘆く経営者がいます。
泣き言をいう時間があるなら、自分達の強みを洗い出し、新たなブランドを持つ努力をする。これが、独立自尊の経営スタイルです。
 
いつも他人に頼って生きていれば、他人の都合に振り回されるのは、自然なことです。
 
後戻りができない一方通行の人生を、他人に委ねていること自体、良いことなのか。
こうしたことを考える時間がない人ほど、ブランディングの意識がないのです。
 
下請けも、けっして悪い仕事ではありません。
しかし、自分達の強みを知らずに生き続けることの危うさ。これを自覚することもまた尊いことです。
 
 
少し難しい言葉で言えば、コアコンピタンス(得意分野)を自覚し生きることは、個人だけでなく、法人にとっても、充実した人生を送るためには必要なことです。
 
自分にしかない得意分野を活かし生きるからこそ、自然と独立自尊の精神が生まれ、成功も失敗も他人の所為しないで済む。これこそが、充実した人生を歩むための智恵であります。
 
 
 
ブランディング戦略についての話に戻しましょう。
 
これから話すことは、実践的な現場にいた者しか発見できない、非常に怖い事例です。
 
人の記憶には、必ずしも明確なものではなく、曖昧なままイメージとして残るものもあります。
 
 
私が最も恐れていることをお話します。
それは、曖昧なままイメージとして、お客さまの記憶に残るものを、運営者側が気づかず商売することです。実は、このケースが多いのです。
 
大企業でも、中小企業でも気づいていない人の方が多いでしょう。
 
 
この現象の何が怖いのか。
その意味が分かれば分かるほど、あなたも必ず恐ろしくなります。
 
本講義では話が長くなるため、詳細は割愛しますが、哲学編等の講義と並行して学んで頂ければ、必ず見つけられます。
 
それでも重要な点は、少し本題から逸れますが、ここで簡単にお話します。
 
 

人には意識的記憶と、無意識的記憶の二つがあります。
 
簡単に言えば、意識的記憶とは思い出せる記憶です。
無意識的記憶とは、思い出すことができないにも関わらず、深層心理には、しっかりと入っている記憶です。
 
意識的記憶は、思い出せるため、悪い記憶でも良いことがあれば良い記憶に変えられます。書き換えができる記憶、これが意識的記憶と呼んでいるものです。
 
ところが、無意識的記憶は、本人の自覚がないため書き換えが容易にできません。
 
そこで、非常に怖いと言う意味が分かる実例を挙げましょう。
 
例えば、「あの店に、なぜ買い物に行かないのですか」と、尋ねます。
 
あの店の商品は欲しくない。
あの店で働く人の態度が悪いから行かない。
 
これらのような記憶は、全て意識的記憶です。
そのためお客さまは、店に行かない理由を即答できます。
 
これにより運営者側は、反省でき、改善もできる。したがって、人間の記憶が意識的記憶だけなら、アンケートもとる意味があります。
 
 
ところが、あなたにも経験ありませんか?
 
行かない理由を尋ねられて、「理由は特にはありません。でも何となく、あの店には行かない」と、答える店がないでしょうか。
 
この「何となくという感情」の源こそ、無意識的記憶であることが多いのです。
 
本人が、気づかないまま無意識的記憶に、嫌な記憶が入っていることがあります。
 
具体的に嫌な体験を、思い出すことはできない。しかし、行動抑制はかかっているという記憶があるのです。これが、再来店を阻む最も恐ろしい心理現象なのです。
 
怖いのは、無意識的記憶の中にある負のイメージや不満は、アンケートでは取れません。無論、私たちなら採れる方法は知っていますが、信憑性の裏付けは、かなり難しいです。そのため、私はアンケートを原則実施していません。
 
この無意識的記憶の存在を意識して経営している経営者が、どのくらいおられると思いますか。
 
私の印象では、ほとんどいません。
特に、売上不振原因が分かっていない店長のいる店は、この現象を、まず知りません。そのため、改善ポイントすら発見できず悩んでいるのです。
 
 
商人道義塾の哲学編で、理想論ばかり語っていると言う人も世の中にはおられるでしょう。
しかし、私は理想論を語っているとは思っていません。そこで、表面的な哲学を語っているレベルでは無いことを証明するために、私の独特の感覚を公開します。
 
恩師 村田昭治先生の名を語りながら始めたマーケティングの講義ではありますが、師の受け売りだけではないと分かるものを、あなたにも少しお目にかけましょう。
 
 
 

無意識的記憶が、いかに怖いことか。

 
 
私のセミナーを受講した人達も、私の話を聞いてはじめて知りましたという人達が多いです。
 
それでは、どれほど怖い現象かを、イメージ写真で説明します。

店の取扱商品も同じ、売価も同じ。しかし、集客率が違う店があります。
店員各位が直接お客さまに粗相することがないにも関わらず、感じの悪い店という記憶が残る典型例が、以下の写真です。
 
 
 
 

 
 

 
 
 
あなたは、上の写真に写る二人の店員さんをご覧になり、どう感じますか?
 
 
 
店員各位が品出ししている時の雰囲気も、通りすがる間に、お客さまの記憶に無意識に残されているのです。
 
これが、無意識的記憶の中に、「感じの悪い店」と記憶されるのです。
この無意識的記憶の中にある負の記憶が、再来店時に、「何となくあの店には行くの止めようと思う」、原因なのです。
 
そして、人間は本能的に、立ち振る舞いが、いかに美しくても、説明する言葉が文法上正しくても、それだけで良い人だとは思わない。
相手の目や、体から出るエネルギーを、無意識に感じとって判断しているのです。
だからこそ、具体的に言葉にできないけれど、好きになれないという人が、誰にでもいるのです。
 
無意識的記憶が恐ろしいのは通りすがり程度でも、店員各位の雰囲気は記憶してしまっているのです。
ところが、退店直後でさえ、お客さまに店員さんの様子を尋ねたところで、具体的には思い出せません。
なぜならば、お客さま自身がまったく意識していない状況だったからです。
 
それにもかかわらず、店員さんの雰囲気の悪さは、潜在意識の中に記憶されているのです。
これが、私が曖昧なイメージとしての記憶という理由です。
 
したがって、この現象の怖さを知らない人が接客指導しても、非常に幼稚なレベルで終わってしまうということです。
 
これがいわゆる、立ち居振る舞いは美しくても、感じが悪いとお客さまから思われてしまう従業員がいる理由なのです。
 
百貨店でも、航空会社でも、宿泊業でも、この怖さを教えることができる人が減った。いや、いなくなってしまったと感じています。だからこそ、この現象の怖さが増しているのです。
 
 
この怖さ、あなたは知っていましたか?
 
 
もし、ご存じ無い。あるいは興味が有る場合は、哲学編の斥力の講義や、実践編にある雰囲気改善の講義を受講してみてください。
 
 
 
 
 
 
それでは、本題に戻しましょう。
 
怖い話をしてお疲れになったと思いますので、先ずは、差別化についての基本からお話しさせて頂きます。
 
 
それでは、あなたに質問しましょう。
 
何でも良いです。あなたの好きなジャンルのもので実験してください。
 
例えば、
 
あなたの好きな自動車メーカを挙げてください。
あなたが好きな洋服店の名を挙げてください。
あなたが好きな花の名を挙げてください。
あなたが好きなシャンプー剤の名を挙げてください。
 
意識して名を挙げると、数が多くでる人がおられるでしょうが、通常は、四つぐらいしか思い出さないでしょう。多くて七つほどです。
無論、個人差はあります。
 
 
あることに、気づきませんか?
 
最初に思い出す段階で、既に選択肢が狭まっています。
全種類を思い出したり、書き出したりして検討しないということです。
 
ここで重要なことは、最初に思い出した中から購入される確率が、高いと言うことです。
したがって、脳裏に浮かばないものは、購入対象外に簡単になる。
無論、脳裏に浮かんでも選択から漏れれば、購入対象外となります。
 
脳裏に浮かんでも選択から漏れるもの。これが、よく言われる競争力が乏しい商品ということです。
 
ブランディング戦略で重要なのは、自店や、取り扱い商材が、お客さまの脳裏に浮かぶ瞬間を踏まえているかです。
 
ブランディング戦略では、自店や取り扱い商材を、お客さまに思い出してもらう瞬間を、計算に入れて立案する。あるいは、思い出して貰える引き金を、いかに商材に組み込むか。これが、ブランディング戦略です。
 
 
最近ある良い例が、「SNS映え」という言葉があります。
 
SNS映えするものを、デザインや商材に組み込み、口コミの誘導や、話題性を作る。したがって、これも、重要なブランディング戦略なのです。
 
ただし、奇をてらい過ぎると、簡単に飽きられるという恐れがあります。
振り子の原理のように、偏りが大きいと、反動も大きくなるのです。
 
長い商売を希望するなら、奇をてらい過ぎず、一見地味でも愚直に働く方が良いことが多いです。
 
 
 
それでは、ブランディングチェック方法の実例を出します。
 

あなたの店が外食店なら、メニューの中に、お客さまの記憶に残るものがあるかを、チェックします。いくつあるでしょうか?
 
そして、チェックしたものを、今一度確認してください。
 
それは、食べる前の写真や能書きで記憶に残るものですか?
あるいは、飲食後でないと記憶に残らないですか?
 
注意が必要なのは、一度みただけ、あるいは一回食べただけで、3日後も思い出せる物でなければ、再来店には繋がりません。
したがって、かなりハードルが高いことなのです。
 
 
あなたの店が小売業なら、お客さまは何を記憶して退店するか。思われる全てをチェックします。
 
売上データをヒントにする場合は、単に販売数や販売額だけを見るのでは無く、売れ筋と売れていない商品の比較から店内動線を見つけます。
お客さまが少ないエリアは、どのような記憶が残るのか。
あるいは、残っていないのかが見えてきます。
 
デットエリアを作らないためには、どのようにお客さまを誘導すれば良いか。
これらのヒントは、全てお客さまの記憶の仕方を観察することが近道になります。
 
 
 
私の祖母は、非常にきれい好きで働き者でした。いついっても、塵一つ落ちていない家に住み、テレビのリモコン等は、いつも同じところに置いてありました。
 
ある日、高いところにある物を取って欲しいと頼まれ、脚立を使って箱を下ろしました。下ろして見ると、箱がホコリだらけだったことを覚えています。
 
祖母は、小柄でしたので、自分の手が届かないところは掃除ができなかったのです。
 
なぜ、このような話を唐突にするか。驚きましたか。
 
 
実は、陳列も同じなのです。
背丈の違いで見える景色が変わる。したがって、高齢者用と若者世代では、陳列の見せ方も変える必要が有る。
ところが実際は、チェーン店の場合、本部で決めたデザインで統一されていることがあります。
 
しかし、地域によって来店客層は違う。客層が違えば心理も違う。この心理の違いを本部のパソコンで分かるのか。この問いがない会社が、苦戦をはじめると見ています。
 

「全ての答えは、現場にある」と、昔から言われる理由は、これなのです。
本社のパソコン上でお客さまの動線を、デジタルログの線図で見たところで、抜本的な解決方法は見つかりません。
 
POSデータで売れ筋を知るだけでなく、どのような心理で購入しているのかが大事なのです。
 

例えば、惣菜が売れるとします。
 
何が売れるかよりも、誰が買うのかを知ることの方が、次に繋がるヒントになるのです。

肉体労働系の男性が多く買っているなら、カロリーだけでなく血糖値の上昇率も考慮しないといけません。考慮しなければ、食後の満足感を得られなくなります。
 
食後の満足感を得られないものを、昼食や仕事帰りに再購入することがあるでしょうか?
 
 
逆に、高齢者の場合であれば、咀嚼しやすさ、呑み込みやすさ、塩分濃度等々を考慮する必要が生まれます。考慮しなければ、再購入時に、二の足を踏ませるように誘導してしまうのです。
 
 
このような話をすると、口ではお客さま第一と言っていても、心根が違う人はすぐ発見できます。
 
「採算が合わない」、「手間がかかりすぎる無理だ」と、すぐにおっしゃるからです。
 
すぐに無理と諦めては、この世に百円ショップのチェーン店など生まれません。
商売にとって大事な心得の一つは、知恵を絞ることを厭わない生き方をすることです。
 
採算が合わない。手間がかかる。確かに物理的に、如何ともしがたいことは当然あります。
 
ところが、簡単に答える人の心根というのは、「人のために身を削ることが嫌という心理」が先にあることの方が多いのです。
言葉尻より、心根をみて分析する。私の見方です。
 
 
ここ数年の間に、何を観察して臨店をするべきか、エリア管理の担当者に教えていないと感じるチェーン店が、年々多くなりました。
 
因みに、私が臨店する際は、子供向け商材のところは、しゃがみながらチェックし、高齢者向け商材なら屈みながら歩き、若者向けなら台の上に乗って見渡すこともしていました。
 
今は、やらずに済む様になりましたが、それでも店の中で目を瞑り、人の動きの気配を感じる時間は、必ずとります。
良い店かどうか。右肩上がりの店か。これらを、お客さまの心身の振動が教えてくれるからです。
 
この感覚が得られれば、帳簿データなど見ずとも、必要な情報は充分に得られています。
 
山口さんは、帳簿やPOSデータを見ないのですかと、驚く人が多くおられました。
 
過去の売り上げ実績は納税には必要でも、私は会計士ではありません。
過去の実績確認より、将来を予測するための情報の方が、私には重要なのです。
 
私が過去の売り上げ実績に強い関心がないのは、売上不振原因が売上の良い時から始まっていることが多いからです。
 
したがって、私としては帳簿やPOSデータより、遥かに欲しい情報があるだけです。臨店時に出納簿等を観ることは、よほどのことが無い限り有りません。
 
観なくても余剰在庫の有無や、死に筋商品など、具体的な指摘ができているため、余計に驚く人もおられます。
 
 
 
あなたの会社は、正しく自店を管理できていますか? 
 
あなたがもし経営者なら、従業員各位の心根を正確に把握できていますか?
口ではお客さま第一と言いつつも、心根は自己都合に浸っている。そういうことはないでしょうか?
 
今一度、思い浮かべて見てください。
 
 
心根が自己都合になっている店員は、必ずそれが体から負のエネルギーとして発散されているのです。
 
そして、お客さまの無意識的記憶の中に負のイメージとして収まってしまうのです。
これこそが商品や店舗デザインを変えても、店舗評判が上がらない原因なのです。
 
そして厄介なことにアンケートを、いかに丁寧に実施しようが、お客さまの無意識的記憶の中にある本音は、ほとんどが抽出できない。だからこそ、怖いのです。
 
 
アンケート結果だけで喜んでいるようでは、実は危うい。
あなたも、そう思われませんか?
 
 
 
 

ブランディング戦略の失敗事例

 
 
次は、実際に有るブランディングの失敗例をお話しましょう。
 
フランス料理のシェフに、お客さまにどのように自店を覚えてもらいたいか尋ねます。
 
失敗するシェフは、「フランス料理店だと覚えて欲しい」というのです。

フランス料理の店は、他にも多々ありますので、フランス料理店だけでは記憶が曖昧になってしまいます。そのため、お客さまがフランス料理を食べたいと思った時、自店が思い出される確率が下がってしまうのです。これが、失敗の典型例です。
 
 
そこで、お客さまが記憶し易いということを意識してメニューをつくる。これが、ブランディング戦略です。
 
フランス料理店なのに、食後のジェラートがSNS映えして、誰かに話したくなると記憶される。
 
メインディッシュのソースの味や、盛り付けの美しさが忘れられないと記憶される。
 
ワインと料理のペアリングが絶妙で赤ワインしか飲まなかったのが、白ワインの魅力を知った等々、具体的な記憶が、お客さまの脳内で映像になるようにするのです。
 

極端な言い方をすれば、フランス料理店だと覚えて貰えなくても良いのです。
それよりも、もう一度行きたくなる理由が記憶されることの方が、商売では重要です。
 
 
ここで、非常に重要なことは、強い記憶、長期間残る記憶は、感情と切り離せないということです。
 
 
あなたにも経験があると思います。
見慣れた数字であっても、一回聞いただけでは覚えられない電話番号があります。
 
ところが、たった一回でも非常に嫌な出来事は、何年経っても昨日のように鮮明に思い出せます。
その逆もあります。感動的で、嬉しいことも長期間記憶できます。
 

人間の記憶は、強い感情が伴うことで長期間保存される。このことは、サービス業の現場にいれば、すぐ気づきます。
 
だからこそ、接客が問われるのです。
 
令和の時代は、何でも合理的、効率的で実施することが近代経営だと思い、サービス業にも取り入れようと考える人が増えました。これにより、人心を後回しにする傾向が、強いように感じます。
 
無意識的記憶の恐ろしさを知れば、サービス業が人間を主とする産業だと言われる本当の意味が、あなたにも、お分かり頂けたのではないでしょうか。
 
経営層が、従業員を労働者とだけ見なし、パートタイム職員を作業者とだけ見なすと、従業員各位の士気は下がる。士気が下がれば、従業員各位は陰の雰囲気の状態になる。この雰囲気が、お客さまの負の無意識的記憶として残ってしまう。そして、簡単には書き換えのできない記憶になる。これこそが、再来店を阻む、目に見えない原因となるのです。
 
そしてこれが、確実に閉店倒産している会社や店舗の共通点なのです。
 
「企業は、人なりという意味」
「従業員ほど大事はないという意味」
 
これらの本意を、ここで改めて実感してみてください。
なぜ、人間が大事なのかと。
 
 
 
 

ブランディング戦略の秘訣

 
 

それでは、ブランディングの実践についてお話しましょう。
 
改めてお話します。
 
ブランディングとは、自店の商品と他店の商品の違いや付加価値をお客さまに記憶してもらうことです。そしてお客さまの記憶自体が、ブランドになると言うことです。
 
もし、あなたが今までブランディングに関して興味深く実践していないとするなら、今日からすべき事は、自店をどのようにお客さまに記憶して頂くか。取扱商品の何を記憶に残して頂くかに集中して考えて、実行することです。
 
 
 
 

例題 

 
 
それでは、理解を深めるために例題をお出しします。
 
 
駅前に5階建て雑居ビルがあると想像してください。
 
1階は、大手のラーメンチェーン店がある。
2階は、大手の定食チェーン店がある。
 
4階は、大手の和食系居酒屋チェーン店がある。
5階は、大手の焼き鳥居酒屋チェーン店がある。
 
この雑居ビルの3階に入居するか検討しようとした場合、あなたならどのように考えますか。
 
ライバルが多い所に出すのは怖いと、単純に考えますか。
 
ブランディング戦略のコツを知っていれば、同業他社がいるところの方が、良いこともあるのです。メリットの一つは、宣伝費を抑えられるからです。
 
大手が宣伝してくれて集客してくれる御陰で、広告を打つ必要がない。
あるいは来店アクセス方法を案内する際に、△駅前の○店の上、下と言うだけで場所が分かる人が多いのです。
 
「名人でも釣りは、魚のいるところでする」これは、商売にも当てはまることです。
 
そこで、この雑居ビルに入居しようとする際に必要になるのが、お客さまの記憶を踏まえたブランディング戦略です。
 
この雑居ビルは、外食業という記憶が、お客さまに強く残っている可能性が高い。そのため、外食業以外が入居すると苦戦しやすいです。無論、知恵を絞れば、服飾店でも無理ではありませんが、成功確率の難易度は上がるため、ここでは考えません。
 
また、各階の店の客単価は、5,000円を下回ると予想された場合、外食ならば良いと客単価1万円以上の高級店を出店しても、苦戦しやすくなります。
 
そこで、客単価の近い店をつくる判断になりますが、この時にブランディング戦略という考え方が大事になってきます。
 
入居間も無いころは、4階、5階の店が満席だからと、3階に流れてくる可能性はあります。
しかし、おこぼれのようなスタイルでは、リピーターは増えません。
 

店の雰囲気自体か、メニューか、「お客さまの記憶に明確に残るものを、最優先で作る」これを意識することが、生き残るためのコツです。
 
あなたも、自社自店の様子を観察し、何が強みなのか。何をお客さまは記憶して購入されているのか。再検討しては、いかがでしょうか。
 
 
 
仮に今経営が苦しく、新しい商品開発や、店舗開発に投資はできないと思われたなら、がっかりせず、安心してください。
 
難しく考えたり、お金を掛けたりする必要がない、誰にでもすぐできるブランディングがあります。

それを最後のお話にいたします。
 
そして、お客さまに恵まれるようになるシンプルなコツを、お分けします。今まで考えてもいなかったなら、今日から実践してみてください。
 
 
 
 

 
 
 

この世で、最も強いブランドとは何か

 
 
 
商人にとって、最も尊く、最も強いブランディングとは何か。それは、あなた自身です。
 
これに本気で気づくことが、商売、そしてセールスの世界では、成功の鍵になります。
 
大事な点は、会社でもなく、店でも無く。あなた自身だと言うことです。
 
 
人類の歴史上と、そしてこれからの未来を想像して見てください。
あなたと同じ名前や、顔や姿が似ている人は過去にいます。未来にもいるでしょう。
しかし、あなたという人格は、現世だけです。
 
そして、広大無辺の宇宙の中で、あなたという人格は、唯一無二の存在です。
自分自身こそ、最高のブランドだということです。
 
これは、きれい事ではなく、事実です。
 
人は皆、ただ命ある肉体を有して存在しているだけではなく、自性というブランドを有して生きているのです。
 
だからこそ、この事実を軽視している経営者のいる会社は、本当の意味で人を活かせない。
その結果、逆境にも弱いのです。
それに、あなたもお気づきになりませんか?
 
確かに、従業員を画一的なマニュアルで動かせば、効率的でコスト削減にもなることは事実です。
 
「言われたことだけしていれば良い」は、管理する側も、働く側も、たしかに楽なのは事実です。
 
これにより、ある一定のところまでは、成長しています。そのため国内外問わず、先進国であれば、しばしば目にする経営スタイルです。
 
ところが、一旦停滞し始めたとき、上手く行かなくなる。これも、しばしば目にすることではないでしょうか。
 
 
 

人間一人一人に、生来のブランドがある。
お客さまだけでなく、全社員にもある。

 
 
 
こうした意識の希薄な経営層がいる会社の多くが、停滞したとき先ず考えることが、商品入れ替えと、店舗リニューアルです。
 
確かに、売れ筋を分析し、商品を入れ替える。流行に合わせ店舗リニューアルする。これらは、悪いことではありません。
しかし、最も大事なことが欠落しているために、回復できるチャンスを自ら消しているのです。
ここでいう最も大事なこととは、社員の士気の総和です。
商売は、社員の士気に大きな影響を受けるのです。
 
社員の士気の高低を観察すれば、容易に五年後を予想できています。
 
 
ある小売業企業の関係者と話した際に、「この会社は、サイドブレーキをかけたまま、アクセルを踏んでいる車と同じですね」と、申し上げたことがありました。
 
どういう意味かと申しますと、正規社員には手厚い教育を行い、福利厚生や人事考課も整っており、絶えず士気を高める努力をされていました。
 
ところが、店頭におられる85%以上の方々は、非正規雇用者です。
その方々には、労働対価しかない。「言われたことだけ、間違いなくしてくれれば良い」という空気です。
 
そのため、本能的欲求や、主体性を活かせず、自然に士気が下がる。
しかも、士気が下がっているにもかかわらず、長期間それが放置状態です。
これで、セールス力が高まるのかと言えば、物理的に不可能なレベルです。
 
この状況を比喩にし、「この会社は、サイドブレーキをかけたまま、アクセルを踏んでいる車と同じですね」と申し上げたのです。
 
この現状、令和の時代ほとんどのサービス業に、当てはまることではないでしょうか。
 
あなたの会社は、大丈夫ですか?
 
 
正社員とパートタイム職員は契約上、待遇や権利が違います。これは止むを得ない事実です。しかし、人としての価値が職制で変わるわけではありません。
 
 
 

人を粗末に扱って成功できるほど、人間の世界は甘くない。

 
 
 
この事実を多くの現場管理職、そして経営者各位が気づかれ、日々実行されれば、この国は、再び活力を取り戻すと思います。
 
正規雇用だから、派遣社員だから、パートタイム職員だからと隔てるよりも、組織全体のパフォーマンスを真剣に考えるべきと思いませんか。
 
 
 
他方、多国籍企業の経営層や管理職各位が、自国の社員、現地の社員を公平に接して大切にすれば、それが、巡り巡って平和の礎を強くします。
 
サービス業は、平和でしか成り立たない。だからこそ、私が言うことは気休めではないのです。
 
人間の本能からみれば、自分を大事にしてくれた人に武器を向けることは、非常に難しいことなのです。(ご興味あれば、哲学編の【特別講義】を受講してみてください)
 
 
本題から外れますが、パートタイム職員の話がでましたので、パートタイム職員の士気を上げるコツについて少しだけ話します。
 
商売が上手く行かない店の多くが、パートタイム職員についての認識を間違えています。
 
正社員各位は、会社側の人間という位置付けでも良いです。
しかし、パートタイム職員は、会社側の人間ではありません。ここが、軽視できない重要点です。
 
では、パートタイム職員は、どのような存在か。
それは、パートタイム職員は、お客さま側の人達。言い換えれば、お客さまの延長線上におられるのです。
 
したがって、パートタイム職員は雇っている人達だと、上から目線で扱っていては、商売が失敗する元をつくります。
多くの店長が、この厳しい現実を知らないと感じています。
 
パートタイム職員各位は、お客さまの延長にある方々であり、近隣地域の評判を左右している方々だと思って間違いないのです。
 
例えば、機密保持で雇用契約を結んでいる場合、惣菜の作り方は友人でも、近所の人にも言えません。しかし、あの店で買った方が良いか悪いかだけは、言えるのです。
「ここだけの話・・・」という話が好きな人の方が多い。
 
だからこそ、正社員以上に手厚い気持ちで対応していないと、簡単に足を掬われるのです。
ましてや作業員だと思って雇用していると、永久に士気が上がりません。
その結果、店舗の評判も上がらないのです。
 
店舗の評判を上げたいなら、正社員以上に手厚くパートタイム職員をもてなす。これが、近道です。
 
店舗の評判を上げる為に、手厚くパートタイム職員をもてなし、パートタイム職員各位の顔つきが、柔和な微笑みを感じられる状態で店内にいて頂く様にする。
専門的な言い方になりますが、このガバナンスが大手企業ほど、今求められているのです。
 
 
チェーン店で売上が悪い店。
来店客数が少ない店。
良品を扱っていても評判が上がらない店。
 
こうした店舗の店長は、「正社員以上に、パートタイム職員をもてなさなければならない」という感覚が無いのです。
あなたの周りの店では、ありませんか?
是非、観察してみてください。
 
商売をする上では、品質や店舗デザインの良さも大切ではありますが、それより遥かに社員の士気が高い方が大事だと気づきます。
 
繁盛店にするためには、けっして避けられないことです。
これを商売をする人は、けっして忘れないで頂きたいと願っています。
 
会社でも店でも同じく、組織の発展は、ルールやシステムという仕組みに源があるのではなく、構成員の心の状態に源がある。これは、紛れもない事実です。
 
 
 

パートタイム職員の士気を上げるコツは、手を合わせるような気持ちで感謝しつつ、徹底的に優しく接することである。
 
パートタイム職員の士気の高低は、仕事中の人相が教えてくれる。(前写真参照)
 
サービス業の正規雇用者が賞与を得られるのは、ひとえにパートタイム職員がおられる御陰。
この事実を忘れるから倒産するのである。

 
 
 
 
 
本講義のブランディングで、あえて自分自身こそ、最高のブランドだと言うのには、理由があります。
 
自分がブランドと思える心根が、商売成功だけではなく、生きる上で非常に重要だと分かっているからです。
自分がブランドだと思える人は、自分の生き方や考え方に迷いが無いからです。
 
自社自店のブランディングを考える際に、主体となる自分に迷いがある、あるいは自分に自信が無い人は、自社自店のブランドを考えることができないのです。
 
迷いがある人は、いくら考えても良いブランディング戦略のアイデアが出せない。このことが経験的に分かっているのです。
 
商人道義塾の講義が哲学編から始まっているのも、理想や理念を語るだけが目的ではありません。
 
商売繁盛のために、迷いを消すのが先だと分かっているからです。
先に商売とは何か。人間とは何か。これらを深く考えることで、己の自性や個性と向き合い、そして自分しかない存在価値を自覚する。ひとえに、迷いを消すためにも、哲学編があるのです。
 
 
自己愛の弱い人は、自性の自覚も弱い。あるいは自分しかない個性にも気づかないことが多いのです。
 
 
 
本質を語るために、少しだけ難しい言葉で表現します。
 
 
 

ブランディングを換言すれば、自社自店のアイデンティティ( identity)を創ることである。
 
したがって創る人間側にアイデンティティがなければブランドを創る要素がない。
 
自分自身がブランドだと思える心根こそアイデンティティがある証しである。
アイデンティティがある人間は、ブランディングなど知らなくとも結果的にブランドを創れる。
 なぜならブランディング戦略は、主体性の強い者ほど成功する確率が高いからである。

 
 
 
アイデンティティという言葉は、辞書を見た方が分かりにくい言葉の一つです。
自我同一性や、存在証明と書かれていても何のことか分かりにくいと思います。
 
そこで、簡単に説明します。
 
アイデンティティとは、平たくいえば、「自分が自分でいるための証明」、「自分たらしめている他者と区別できるもの」です。
言い方を変えれば、自分と他人が混同されないものです。
 
他者と自分の違いを自他共に認識し、自覚できている「もの」が、全ての人にはあります。ここで言う「もの」これが、アイデンティティの正体です。
 
さらに分かり易く言うなら、人それぞれがもっている無二の個性を、自分自身も他者も認め理解しているということです。
 
例えば、A夫妻に子供が三人いれば、A夫妻の子と三人一括りで一つのアイデンティティになるのではなく、兄弟それぞれに別々のアイデンティティがあると言うことです。
 
そのため、親から見れば、仮に三つ子でも間違えず識別できます。
 
兄弟それぞれが、なぜ識別できるのか。この問いを考えて答えることができれば、アイデンティティの意味は分かるのではないでしょうか。
 
兄弟それぞれの識別できる点を、親も子も分かっています。
ですから日によって長男が入れ替わることはありません。
 
外見が似ている三つ子でも識別できるのは、「アイデンティティ」があるからなのです。
 
アイデンティティの言葉自体より、意味を感覚として分かれば充分です。
安心して進んでください。
 
余談ですが、私がアイデンティティを意訳すると、我欲元(がよくげん)となります。
 
人が生きる上では、善くも悪くも欲望が必要です。何を欲するか、何を求めるかで、個々の性(サガ)が際立つ。
これが、アイデンティティを「我欲元」と意訳する理由です。
 
「欲を捨てよ」と簡単におっしゃる人がいますが、私は子供の頃から、この人は、人間を深く学んでいないと感じます。
 
食欲や睡眠欲を無くして、人間業できますか?
欲は捨てるものでは無く、コントロールするものです。
生命は欲望の塊です。本能的に生きれば、欲望が原因で争いが生じる。だから、平和で、充実した生活を送るために、克己心が大事なのです。
 
我慢ができない人ほど、過酷な人生を歩む。これは子供の世界、大人の世界、いずれも同じです。
親が子を幸せにしたいなら、教えなければならない能力の一つが我慢です。
 
 

※ 御注意
アイデンティティは、外見の違いではありません。
肌色や髪の色の違い、背丈の違い、あるいは国籍、それらの違いは、アイデンティティとは違います。
容姿ではなく、個性、人格といった内面性や精神的な違いです。
念のため捕捉します。

 
 
 
 
 
ブランディングの話に戻しましょう。
 
「己が何者かで、何のために生きているか」を、ぶれずにもっているからこそ、強いブランディングも創れるのです。
 
また、アイデンティティには、主体性という意味もあります。
したがって、他人の力に頼る受動的な性格では、ブランディングは創れません。これが、商売に独立自尊の精神が必要だと、私がいう理由です。
 
 
 
商売のみならず、ビジネスも真理さえ掴めれば、性別年齢は関係無く、正しいものが自然と見えてきます。人生も同じです。
 
そのためアイデンティティなどの難しい言葉の意味を知らずとも、心配はいりません。
「自分の存在意義」を意識しながら働いてさえいれば、自ずと自分自身がブランドだと感じるようになります。
 
これは、理屈ではありません。実践していれば、誰でも感じます。どうぞ安心してください。
 
 
業種問わず、個店でもチェーン店でも同じですが、「あなたがいるからこそ、あなたから買いたい」という人を増やす。これが、商売繁盛の秘訣です。
 
美味しい料理の店は、世の中に他にもある。それでも、あなたの料理が食べたいと思う人を増やす。
 
上手な美容室は、他にもある。それでも、あなたに髪を切ってもらいたいという人を増やす。
 
「他の誰でもない。あなたに」と人から言われる評価こそ、星の数や、口コミの点数を気にするよりも、遥かに大事なことです。
 
「あなたがいてくれる。だから私はここに来るという関係」これこそが、最も尊いブランディングであり、最も強固なブランディングなのです。
 
これは、一流と言われる人達が、日々実践していることなのです。
したがって、理想論ではなく、現実の話です。
 
だからこそ、本気で考えてください。
あなたという存在、あなたというブランドを。
 

「あなたが、この世にいてくれて良かった」と記憶される。これこそが、最高のブランディング戦略です。
 
 
もしかしたら、心配がよぎりましたか?
 
自分を目当てにして来店するお客さまが増えた後に、自分が転勤や栄転になったら店が困るのではないか。
 
確かに、困ります。
しかし、はじめから困ることを前提にしてしまうのです。それだからこそ、後進の指導が大事な意味をもってくるのです。
 
あなたが転勤や栄転になる際は、堂々と「これからは、自分の代わりに、後輩がお客さまのお世話をするようになります。
是非、私の大事な後輩を御愛顧ください。お願い致します」と真っ正面から頭を下げれば良いのです。
 
あなただけの成功だけではなく、あなたがいるお陰で、同僚も後進も助かる。この関係が大切です。
 
人を育てるとは、引き継ぐことをいうのです。それが、伝承です。
 
 
人間は皆、いつかは心臓が止まるのです。
自分がいなくなったら困るだろうではなく、自分がいなくなっても困らない様にする。
これが、先達が忘れてはならない心得です。だから社内教育が、大切なのです。
 
自分が、この世からいなくなるということを前提にし、後進に教える覚悟ができれば、指導論など読まなくても、教え方は自ずと上手になります。
 
ですから、臆することなく自分のファンを増やしてください。
そして、それが巡り巡って自分の子孫への目に見えない宝になります。
 
これが経験した人だけが知っている「積善の家には、必ず余慶あり」の本意です。【link:フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)参照』】
 
この話は、いずれ哲学編の「家族を犠牲にして家族が強運を得る」等で改めてお話する予定でおります。
 
 
 
 
 

お客さまが自然と増えてしまう、誰にでもできる簡単な秘訣

 
 
 
最後に、お客さまが増えていくようになるための簡単な秘訣をお分けしましょう。
 
 
それは、まず自分から良いお客さまになることです。
具体的には、「金を出す方が偉い」という感覚を、先に自分から捨てることです。
 
 
自分が先ず良いお客さまになることで、巡り巡って、良いお客さまに来店頂ける様になります。
これは、経験者にしか分かりません。
 
科学的には証明できないものですが、是非、嘘では無いことを、あなた自身が体験してみてください。
 
なぜ、そうなるのか。私がここで理由を語るより、あなた自身が経験する方が尊いです。
経験で得られたものが、実践で役に立つからです。
 
私がここで語らずとも、次の講義にヒントがあります。
受講すれば気づかれると思いますので、是非楽しみにしていてください。
 
 
 
 
 
 

「実践マーケティングはブランディングと切り離せない」という理由のまとめ

 
 
 
 
実践マーケティング戦略で、なぜブランディングが重要かを証明する際、明確な根拠を示す言葉があります。
 
しかし、この言葉はとても難しい言葉のため普段は、私のセミナーでも一切話しません。
経営者の方と膝を突き合わせる際に語ることが、たまにある程度です。
 
 
公開講義のため特別に公開しますが、難しい言葉はすべて飛ばして頂いて結構です。意味のみ理解して頂ければと思います。
 
 
 
難しい言葉とは、「人間の購買活動は、演繹的推測、帰納的推測、どちらかで行われていることが、圧倒的に多い」ということです。
 
無論、厳密には演繹的推測、帰納的推測を使わず、見た瞬間一目惚れして衝動買いするケースもあります。しかし、この場合は買った後に後悔する可能性が高い。そのため、再購入、再来店はない。したがって、本講義では割愛します。
 
 
 
それでは、「人間の購買活動は、演繹的推測、帰納的推測、どちらかで行われていることが、圧倒的に多い」というお話をしましょう。
 
演繹(えんえき)、帰納(きのう)という難しい言葉を知らなくても困りません。安心してください。この言葉は、大学で哲学や論理学を専攻しない限り、あまり目にしない言葉です。そのため、難しい言葉と言っているだけです。
 
 
言葉自体は覚える必要はないと思いますので、演繹的推測、帰納的推測の言葉の意味だけを分かり易く例えましょう。
 
 
「新しい品を買う」場面を、想像してください。
この時、多くの人は目を瞑ったり、何も考えず購入することは、ほとんどありません。たとえ衝動買いであっても買うための理由というものがあります。
 
そこで買うかどうかの判断を行う際、人間は二つの推測方法を使って買うことが多いのです。
 
 
それでは、新しい靴を買う時を例にします。
 
過去にnew balance【※】のトレッキングシューズを買い、この靴がとても履きやすく疲れなかったという経験がある人がいました。
この人が、今度はランニングシューズが欲しいと買い物に行きます。【※ link:フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)参照』】
 
そこで、new balanceのランニングシューズを見つけます。今まで買ったことがないが、同じメーカだから、これもきっと履きやすいだろうと推測して買う。これが、演繹的推測に基づく買い物です。
 
 
その一方で、new balanceのトレッキングシューズが履きやすいと分かってる人が、また同じメーカのランニングシューズが欲しいと買いに行きます。
 
ところが、new balanceのランニングシューズは、その店には売っていませんでした。 
 
そこでnew balanceのカタログサイトでみた記憶のある同じ形や、同じ素材で作られている他のメーカの靴を手に取ります。そして、この靴も履きやすいだろうと推測して買う。これが、帰納的推測に基づく買い物です。
 
この場合、メーカは違っても、自分が良いと思う条件のいくつかが、一致していることで、購入しようと判断するのです。
 
他にも同じようなケースはあります。
 
例えば、魚油は体に良いと分かっている人が、栄養補助食品を買いに行きます。その時、普段飲んでいる製造メーカの品が売っていないとします。
ところが、同じ含有量のDHA【※】が入った品が、他メーカの商品としてあることに気づきます。この品でも構わないと判断して購入する。これも、帰納的推測による買い物の一つです。【※ link:フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)参照』】
 
 
演繹的推測も、帰納的推測も過去の記憶が活かされているからこそ、推測ができます。
 
 
例えば、演繹的推測が侮れないという話をします。
実際にある店舗で興味深い例を、一つ話しましょう。
 
 
地方に行くと大規模なホームセンターがあります。
 
この商品、いつ売れるのかと首を傾げるほどめったに必要としない物が、陳列されています。誰が観ても余剰在庫になるのではないかと心配するほど、ありとあらゆる物が陳列されています。
 
問題は、こうしたホームセンターが、なぜ商売を続けられるのか。ここが、ポイントです。
 
ありとあらゆる物を陳列しているホームセンターが生き残れる理由は、演繹的推測で購入する人が実際にいるからです。
 
どういうことかと言いますと、何か欲しいものができた際、すぐに手に入れられそうにないと思ったとします。
その時に「あの店なら置いてあるに違いない」と思い出して貰えるのです。
 
「他店にはない可能性が高い。しかし、あの店ならあるに違いない」この記憶の刷り込みが成功しているからこそ、売れ筋商品以外を多く置いていても商売が成り立つのです。
 
この考えで大成功したビジネスを、あなたもご存じではないでしょうか。
 
そうです。Amazon.comです。【link:フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)参照』】
 
街中の書店では、店の広さしか本を陳列できません。そこで、どうしても売れ筋しか陳列できなくなります。
この事情で、専門書やレアな書籍は、店頭では買えないことの方が多いです。この事実を、お客さまは経験的に記憶しています。
 
これを逆手に取り、不動産費が低い郊外に超大型倉庫を作り、そこに出版されている書籍を全て保管し販売する。そうすることで、Amazon.comなら自分の欲しい本が見つかる可能性が非常に高い。
しかも店頭にないことは分かっているのだから、中身を観ずに買っても仕方ないと記憶しているのです。
 
 
今やAmazon.comを書店だと思っている人はいません。全ての商品や情報コンテンツで、取扱商材の多さで勝負しようとしているのです。
 
Amazon.comが、いかに実店舗の脅威か、改めて分かるのではないでしょうか。
 
 
それでもAmazon.comの本当の脅威は、全く別の所にもありますが、話が長くなるので割愛していきましょう。
 
 
 
 

過去の記憶が購入時に多大な影響を及ぼしている。

 
 
この事実に気づくからこそ、お客さまの記憶が商売にとって何より大事となるのです。
 
ここからブランディング戦略の重要さが生れているのです。
 
 
そして、ここで「過去の記憶から推測して、新たに品を買う」ということが分かっただけでは、商売上まったく意味がありません。
 
もう一歩踏み込んで考え無ければならないことが、実はあるのです。
 
それは、「人間の脳細胞は、細胞分裂をしない」ということです。
このことが実践の現場では、非常に重要です。
 
脳については話が長くなるため子細は割愛して、分かり易く結論から言えば、人間は、既にある記憶の回路の上に、新しい記憶を乗せていることが多いのです。
まったく新たなものを脳に入れることは、新しく道路をつくるようなもので、誰にでも非常に負担がかかるのです。
 
そこで脳に負担がかかると、脳は防衛のために勝手に止めろと指示を出すのです。
このため新しく始めるものほど、三日坊主になり易い。
 
これが、大人になってからの外国語の勉強が大変な理由です。
 
 
余談になりますが、せっかく商人道義塾の講義をお受け頂いているので、補足しましょう。
 
勉強ができない子供は、単純に頭が悪いでは片付けられないのです。
勉強ができない子供は、頭が悪いから成績が上がらないのではなく、記憶する習慣が生活にないだけ。そういう子供の方が多いのです。
 
人間の記憶のメカニズムは、覚えること(入力)、覚え続けること(定着)、思い出すこと(想起)この三つの働きで成り立っています。
 
勉強ができる子供と、できない子供の差は、どこにあるか。
あなたは、知っていますか?
 
見識の低い教師は、理解して覚える事と、覚え続けることに重点を置きます。
そのために落ちこぼれる子供が生まれるのです。切なくも悲しい現実です。
 
勉強ができるか、できないかの差は、実は一つだけなのです。
 
それは、思い出す力、想起力です。
この想起力に著しい個人差がある。これが、勉強ができる、できない子の違いです。
 
なぜなら、入力と定着は生まれついて人間は有しています。
ところが、想起は訓練によって良くも悪くもなるのです。
 
テスト時間中に、答えを思い出せなければ、いかに綺麗にまとめたノートを持っていても、分かりやすい授業を受けていてもまったく意味が無い。
これに気づかなければ、成績は上がりません。
 
したがって、この現象を子供の周りにいる大人が知らなければ、落ちこぼれる子供がでるのは、ごく自然なことです。
 
勉強ができない子供がいる原因は、子供自身にあるのでは無く、教育する側にある。そう思われたなら、あなたの身近な子供達は、未来が明るくなります。
 
せっかくですから、さらに補足をすると、記憶のメカニズムには、ある厳しい現実を無視できません。それは、生活環境の影響を受けるという現実です。
 
人が新しい知識を覚えるためには、集中力が必要です。そのためには、呼吸が安定していなければなりません。
 
ところが、子供の呼吸を安定させない環境というものが現実にはあります。
例えば、争いの絶えない家族といる。経済的な心配事がある。学校の人間関係が悪く、自分の居場所がない。こうした環境の中で、子供は呼吸を安定させることが、大人が考えている以上に難しいのです。
 
人間は、不安や心配事、恐怖、緊張、これらの心理状態で呼吸を安定させることが非常に難しい。これは、誰にでも経験があるのではないでしょうか。
 
集中できない環境にいて、勉強ができるようになるでしょうか?
 
 
我が子が勉強ができないと悩むなら、先ずは良い教材や、教師を選ぶ事よりも、子供が安心して呼吸を整えることができる場を作ることです。
それから想起力を鍛えることを主にした勉強法を教えます。
この二つが揃ってからはじめて、教材も、教師も効果を発揮できるのです。
 
一括りに勉強ができない子供は、頭が悪いという低い認識が、無用に子供を責める。そして大事な可能性を奪い、人生をも左右する。このことを、一人でも多くの大人が実感して頂きたいと願います。
 
子供から夢や希望を取り上げれば、必ず治安悪化に向かいます。
だからこそ、誰にとっても他人事ではないのです。
 
詳しい教授法は、指導者・管理職用講義プログラムの講義でお話しようと考えています。
 
 
話が脱線しましたので、戻します。
 
お客さまの記憶の仕方を無視できないことを知ったなら、広告宣伝のキャッチコピーを考える時、何を意識すべきかが判ります。
 
そうすれば直ぐ様、広告宣伝の方法も、一気に変わります。
そうお感じになりませんか?
 
 
お客さまの脳内で、瞬時に映像化できるもの。
あるいは、損か得かを一瞬にして判断できるようにする。
 
これが、キャッチコピーの成否を決めている。ただ、これだけなのです。
レスポンス率が高い広告の意味が分かれば、マーケティングで非常に有利になります。
 
優れたキャッチコピーを学ぶ時に、本を買うことも良いかも知れませんが、非常に良い見本が身近にあります。
 
ジャパネットたかたのテレビショッピングです。(敬称略)【link:フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)参照』】
 
 
販売品は毎日違いますが、「商品が変わっても換えない言葉」があります。
良く観ると同じ言葉を連呼していませんか。
連呼している同じ言葉が、お客さまの購買動機を高めるとご存じなのです。
 
 
高田明前社長の成功を拝見し、私は凄いと感じていました。
あなたも、そう思われませんか?【link:フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)参照』】
 
私自身、高田明前社長から多くを学ばせて頂きました。プレゼンの仕方、マーケティングとセールス法。何が人を惹きつけるのか。
これらの非常に良い生きた見本が、高田明前社長という御方と存じております。【下段 備考欄有り参照願】
 
一品集中販売でけで、成功するのです。
もし、百貨店や量販店が全品で高田明前社長のようなことができたら凄いと感じませんか?
 
このような話をすると、うちの店舗は数十万点の品があるから不可能ですと、心根が自己都合になっているビジネスマンほど、即答します。
 
しかし不可能なのは、昭和の時代の話です。今は、令和の時代です。
 
全商品を人間が説明する必要などありません。そのために、人工知能やクラウドコンピューティングのシステムがあるのです。
 
すぐに不可能だと諦めるから、デジタル機器の効果的な使い方も見つけられないでいる。そう感じますが、あなたはどう思われますか?
 
2022年現在のように、サービス業各社がベンダーが造ったものを言いなりに使用しているようでは、メーカにとっても実は多大な機会損失なのです。
 
 
私が起業した弊社は、元々ITビジネスモデルを企画立案する会社です。
 
その立場から言えば、デジタルの世界は、機器であろうが、アプリケーションソフトであろうが、既にあるものを使い切るという考えではなく、自分達が欲しいと思う最終ターゲットを決めてしまい。それに向けて機器やソフトを開発する。この順番が、実は成功するために重要なのです。
 
 
この証拠であり良い見本を、あなたもご存じでしょう。
スティーブ・ジョブズ氏【※】で、お気づきになれたでしょう?
 
既にできたものを利用する受け身ではなく、自分達が欲しいものをオーダーする。これがデジタル化、成功の鍵です。
 【※link:フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)参照』】
 
欲しいと誰かが思うことは、既に脳内で映像化されているのです。
脳内で映像化されたものが、数年後、数十年後、商品化される。
したがって、先ずはできるかどうかよりも、欲しいことを決めてしまう。
 
こうした考え方ができる人を一人でも多く増やさないと、IT革命を、DX【※】と言い換えたところで、この国は、いつになっても米国に肩を並べることは出来ず、中国にも益々先を越されると感じています。【※link:フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)参照』】
 
 
 
ベンダーが造ったものを言いなりに使用しているようでは、メーカにとっても実は多大な機会損失だという理由、簡単に申し上げましょう。
 
あなたも目にしたことがあると思いますが、店頭に甲高い声を出すロボットがいました。
 
残念ながら売上貢献としては何の役にも立たないと、私は最初から観ていました。
なぜなら、致命的な問題があると感じたからです。
 
役に立たない理由は、ロボット自体が悪いわけではありません。
非常に性能の良いロボットだと、私は感銘して観ています。
特に、ロボットの裏側で動くクラウドコンピューティングの人工知能に未来を感じました。素晴らしいロボット群だと思いました。
 
では、なぜ素晴らしいロボットが役に立たないと思ったのか。それは、簡単です。
 
ロボットを造る側は、接客の現場で苦労したことがない。そのため、問い合わせ心理というものを知らない。その証拠が、あの甲高い声と形状です。
 
逆にロボットを買う側は、ロボット開発のプログラムが分からない。このために、かゆい所に手が届く様な本当に必要な作業を追加できないのです。
 
だから効果的な接点が生まれないのです。
 
 
したがってセルフレジ等も同様に、技術者が自負して持ってきたものを、そのまま使っているようでは、メーカにとっても結果的に損することの方が多いのです。
 
あなたも、そう思われませんか?
 
来店客のほとんどがスマートフォンを所持して来店する中において、接客のためだけの物理的なロボットなど必要無い。投資対効果に合わない。私には、そう感じます。
 
知りたい情報がある時、ロボットがいるところに人間が会いに行くなど、ナンセンスの極み。
道具は人間を便利にするためにあるもので、道具に合わせて人間が不便に動くなど、開発意図が完全に間違っています。違うでしょうか?
 
 


 
 【※備考欄】
 
御指摘ございましたので、補足致します。
 
高田明前社長時代の御話であり、現在のジャパネットたかた社様を推奨しているわけではございません。無論、非推奨することも致しません。
 
代替わりして、以前は無かった強みが補完されていると感心する点はございます。しかし、あくまで見本と申し上げるのは、前社長時代の様子です。
 
高田明前社長の時は、声だけではない抑揚がありましたが、現在は終始同じテンションで行っているように感じ、別物と認識しております。
 
新旧どちらが良いのか。また何から、その違いが生じているのかは分かっています。しかし、ここで子細を申し上げますと、商取引上アンフェアになるとの判断が生じまして控えます。ご了承のほどお願いいたします。
 
 


 
 
 
 
 
あえて、色々なことを感じて欲しいために、本講義は脱線する話題を控えていませんが、再び本題に戻しましょう。
 
 
 

記憶し易さが、購買を促す際に物を言う。

 
 
 
この現象を知っている私たちからすれば、店舗や商品の名前を、記憶し難いものにしているところが信じられません。実に残念だと思います。
 
自ら重りを付けて、マラソン大会に出るようなものです。知らないと言うことは、自らハンディキャップをつけてしまっているのと同じ。
あなただけは是非、注意してください。
 
 
 ただし、お客さまが記憶することが、「言語」とは限りません。
そのため、品全体のイメージさえ記憶できれば、再購入に繋がる事例もあります。
 
例えば、商品デザインが全て英語で、ほとんどのお客さまは読めない。あるいは読んでいない。それでも、欧米から来た良い商品だと記憶されれば、再購入して頂けるのです。
 
英語で書かれていても、よく見ると日本製ということもあるぐらいです。
この点も検討の際には、考慮してください。
 
 
 
 
 

 

 
最後に、一つ捕捉しましょう。
 
お客さまの多くが演繹的推測で再購入や再来店を決めるということが分かると、なぜサービス業は、昔から100-1は、ゼロと言われるか、この意味と怖さも分かります。
 
 
例えば、100種類のケーキを作って売っている店を想像してください。
 
お客さまが初来店時、よほどのことがない限り全品は買いません。
 
そこで、数種類しか買わないとします。
ところが、初回に買ったものが気に入らなかった場合、次は別のものを買いに行こうとはならないのです。
 
あの店には100種類のケーキがある。今日はそのうち5種類しか買っていない。今回は気に入らなかったけれど、次は他のものを買おう。
そう思ってくださるお客さまは、ほぼいません。だから、商売は大変なのです。
 
一部の商品しか知らないにもかかわらず、全ての商品が自分には合わないと思ってしまう人の方が多いのです。
 
 
 

一度の失敗でお客さまが離れる怖さを知って、はじめて商人といえるレベルになる。

 
 
 
 
したがって、自信の無いものや、他の商品とレベルが落ちるものを安易に売ろうとすることは、売れ筋商品の足を、簡単に引っ張ることになるのです。これは、全ての商売で言える怖さです。
 
そのため、1種類のモンブランケーキや、焼き菓子しか売らないのに、なぜ繁盛するのか。この理由が分かると思います。
 
メニューを安易に増やすことの怖さは、食品ロスが増え、仕入値が上がるだけでない怖さもあることを忘れてはなりません。
 
 
豊富なメニューがある際の大事なテクニックは、初来店のお客さまが買い物に迷っておられたなら、一番人気のものから薦める。確率の高い方で勝負をする。ビジネスでも商売でも大事な考え方です。
 
この時、お客さまが買うか買わないかは、別で構いません。
薦めたものを売るのが目的ではありません。
自店の人気は、何かを必ず記憶して頂くようにする意識が大事です。
 
人気商品を買わずに帰り、自分の選んだものが気に入らなければ、買った自分が失敗したという印象になります。そうすれば、もう一度試してくださる可能性が生まれるのです。
 
 
商売は、その場その場で何を買って頂くかが大事なのではなく、お客さまとの御縁が続く様になる方が大事です。
 
 
 
この事例は、接客でも同じです。
 
店員さんが百人いる店でも、たった一人の店員の悪さで、再来店を無くすことがあります。
他の九十九人の人は素晴らしくても、たった一人の店員の良し悪しで店の評判が決まるということも現実にはあるのです。
 
だから昔からサービス業では、100-1は、ゼロと言われているのです。
この怖さは、現場経験のある人ほど注意していることですが、この点もまた教える人が年々少なくなってきていると見ています。

改めてお客さまの記憶が商売に大事かを理解頂ければ、ブランディングの大事さも身に染みてわかると思います。

「お客さまの記憶を味方にする」、これがブランディング戦略で最も大事な心得だと理解して頂ければ、最後に話した難しい言葉を覚える必要は有りません。安心してください。
 
 
 

 
 
 
 
 
 
実際に本講義内容を試しながら、あなたのものにしてみてください。
あなたの成功を願っております。
 
 
 
 
 


 
  
 
 
今回は、様々な話題を控えずに語りましたので、非常に長い講義になりました。お疲れになったことでしょう。
 
様々な話題を通じて、思い悩むことや、考えること、これらが増えることで感情の振幅が生れます。これが、マーケティングセンスを育むために、必要になるのです。
 
世の中には、様々な考え方や性格の人達がいます。自分の価値観にあった人だけを相手にしていては、商売はできません。
 
したがって、包容力や我慢強さ、そして胆力も必要です。本講義は、この訓練の一環でもあります。
 
それでも、長い講義を受講されるのは大変だったと思います。 
あなたの熱心さに敬意と感謝を申し上げます。
 
最後まで、ありがとうございました。
 
 
 
 
以上で、講義を終わりにします。
 
 
 
 

 

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